2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木立 尚孝 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80415778)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RNA / 集団遺伝学 / 進化 / バイオインフォマティクス / アルゴリズム / 合祖理論 / 二次構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、RNAの二次構造配列解析と、集団遺伝学の合祖理論を融合させたRNA進化シミュレーション法を開発することを第一の目標としている。また、これを用いて、RNA制御因子結合部位の露出度やイントロンの端点間距離といった、遺伝子の発現・制御の効率に影響する因子の進化的形態を明らかにすることも目標としている。 平成26年度は、ゲノムスケールでRNAの二次構造的な特徴を計算するアルゴリズムの開発を行った。従来の二次構造計算は、長い入力配列に対しては、数値誤差が大きくなるため、pre-mRNAや長鎖非コードのRNAの二次構造を計算することが難しかった。そこで本研究では、計算過程で互いに打ち消し合う大きな量について、その差分のみをダイレクトに計算する手法を考案した。また、長い配列をたくさんの部分配列に分割し、それらのつながりの関係を失うことなく、多数の計算機で同時並行的に計算する並列計算アルゴリズムも開発した。これらにより、ゲノムスケールでのRNA配列解析の技術的基盤を構築することができた。 開発したソフトウェアを用いてヒトのRNA遺伝子の構造的性質を網羅的に調べたところ、転写領域は非転写領域に比べ、強い構造を取る領域が多いこと、イントロンは強い構造を多くとること、タンパク質コード領域の二次構造的性質は、その塩基組成により良く説明できること、スプライシングの後にエキソン領域はよりアクセシブルになることなど、二次構造に起因する様々な進化的制約がゲノム上に働いていることを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来の二次構造アルゴリズムは、数値誤差や、計算量の面から、ゲノムスケールの大規模解析に使うことが難しかった。本研究で開発したアルゴリズムは、このような問題点に完全な解決法を与えるものであり、今後のRNA二次構造研究を飛躍的に発展させるブレイクスルーとなる成果であると考えている。このアルゴリズムを用いてヒトゲノムの転写領域を網羅的に計算した結果、UTR、タンパク質コード領域、イントロンなどそれぞれの機能領域が、特有の進化形態を持つことを示すことができたが、これもゲノム進化研究において非常に意義深いものであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ゲノムワイドの二次構造解析を行うための、基盤的な技術を開発できた。この技術を用いて、今後はRNAの進化を調べていく必要がある。このために、まず、塩基置換の前後における二次構造変化を網羅的に計算するアルゴリズムの開発が必要になる。また、生物種間でのRNAに構造の比較をするために、脊椎動物ゲノムに対し、網羅的に二次構造アルゴリズムを適用することを行う。そのほか、計算したRNA二次構造から、ゲノムにはたらく構造的制約を測定する集団遺伝学的、及び系統樹解析的なアルゴリズムの開発及び実装を行う。
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Causes of Carryover |
本年度までは、主にアルゴリズムの開発及びソフトウェアの精度評価に取り組んでいたため、研究費の使用は多くない。しかし、ソフトウェアの開発は大きく進んだため、今後は、大規模計算と成果公開のために研究費を用いることにしている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文、学会発表のための予算、公開データベース作成のための機器購入費、ウェブサイト作成を依頼する学生への謝金など、に研究費を使うことを予定している。
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Research Products
(1 results)