2015 Fiscal Year Research-status Report
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25870190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木立 尚孝 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80415778)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RNA / 数理モデル / RNA結合タンパク質 / 確率文脈自由文法 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、RNAの二次構造配列解析と、集団遺伝学の合祖理論を融合させたRNA進化シミュレーション法を開発することを第一の目標としている。また、これを用いて、RNA制御因子結合部位の露出度やイントロンの端点間距離といった、遺伝子の発現・制御の効率に影響する因子の進化的形態を明らかにすることも目標としている。 平成27年度は、前年度までに開発したRNA二次構造を大域的に計算するアルゴリズム(論文投稿中)を利用して、非コードRNAの一つであるNEAT1の二次構造的な進化保存性を調べた。NEAT1は核内構造体の一種であるパラスペックルを構成する主要なRNA分子であるが、その働きはよく分かっておらず、活発な研究が進められている分子である。我々はヒトのNEAT1配列に相同な配列を脊椎動物に渡って検索した。これより一般にNEAT1の配列の保存性は非常に低いことが分かったが、200-500塩基の位置の保存性のみ非常に保存していることが明らかになった。この部分の二次構造もよく保存されていることを明らかにすることができた。 この他、RNAの塩基変化に応じて二次構造がどのように変化するかを網羅的に計算するアルゴリズムの開発や、RNA結合タンパク質結合サイト周辺に頻出する配列・構造モチーフを推定するアルゴリズムの開発などを行った。これらのアルゴリズムは今後精度評価を行い、生物学的に発見につなげていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
塩基置換によるRNA二次構造の変化を網羅的に計算するアルゴリズムの開発は早い段階で行ったが、計算速度が遅く実用的でなかったため、並列計算を利用して高速に二次構造を計算する新たなアルゴリズムの開発を行う必要性が生じた。このため当初の予定よりもRNA二次構造の進化保存性を研究する期間が後ろへずれ込むことになった。但し、二次構造の並列計算アルゴリズム自体は新規性の高いアルゴリズムであり、当初の目的とは少し外れた部分ではあるが、十分な研究成果が出ていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で考える二次構造変化は、DNA配列の個人差から生じるもののみを考えていた。しかし研究を進めている間に、転写されたRNAに引き起こされる塩基修飾やRNA編集による二次構造変化への関心が高まってきた。このため、RNAのエネルギーモデルの修正し、塩基修飾やアデニンのイノシン化による二次構造変化を計算するプログラムにすれば、現在勃興しつつある、エピトランスクリプトームの分野で先駆的な研究ができるだろうと考えている。
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Causes of Carryover |
RNA二次構造変化を計算するアルゴリズムを開発したが、計算時間が膨大にかかり、ゲノムスケールの統計解析が難しいことが分かった。このため、計算を高速化するアルゴリズムを新たに開発することを行った。この新しいアルゴリズムはそれ自身が新規の研究であり、これを用いてゲノムスケールの二次構造解析を行い成果を得ることができた。これらのことにより、元々の二次構造変化の研究は遅れることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
二次構造変化を計算するアルゴリズムの高速化は既に達成されているため、これを用いて、ゲノムスケールの統計解析を行う。このために東大医科学研究所のスーパーコンピュータを利用する。その利用料に50万円程度が必要になる。また、統計解析の結果を広報するために専用ウェブサイトを解説する。このためのRA費が50万程度になる。また、研究成果を学会や論文で発表するために残りの研究費を使う予定である。
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Research Products
(5 results)