2014 Fiscal Year Research-status Report
シクロデキストリンポリマー交互積層膜の創製によるポリ塩化ビフェニルの高度分子認識
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25870402
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Research Institution | Osaka Municipal Technical Research Institute |
Principal Investigator |
川野 真太郎 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究員 (50646198)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 吸着剤 / ハロゲン化芳香族化合物 / シクロデキストリン / 分子認識 / 交互積層法 / カラム担持粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
有害な有機ハロゲン化合物は、毒性、生物蓄積性を有しており、それらを含む油は未処理のまま大量に保管された状態にある。特に数十ppm程度の微量有機ハロゲン化合物が混入した汚染油の処理と、再利用可能なクリーンな油の回収方法が課題である。また近年、化粧品や塗料等に含まれる色素の副生成物に有害な有機ハロゲン化合物が検出されるという報告もあり、油以外にも様々な媒体中からの有機ハロゲン化合物除去のための吸着剤の開発が望まれている。 これまで、環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)と芳香環を有する架橋剤との反応によりCDポリマー(CDP)の作製を行ってきた。本研究では、シリカ粒子などの基材表面にCDPの修飾を行うことを目的としており、得られた吸着剤の安定性や溶媒の流動性向上、ゲストの選択分離が期待できる。初年度および26年度は、主に材料の創製を中心に行った。基材への担持はCDPとリンカーとの共有結合性の交互反応膜作製(graft-from) 法または、あらかじめ作製したCDPの積層化(graft-to法)により行った。 26年度は、水系分散CDPのgraft-to法を用いた簡便な修飾方法を用い、吸着材の作製を行った。この手法は、禁水系でなく大気中での操作になり、効率的に行うことができる。オイル系への利用には、CDP担持シリカ粒子水分散液を凍結乾燥することで水分を除去した粉末を得ることができ、オイル中での吸着実験に即時適用することが可能である。作製方法および結果は以下になる。適切なジイソシアネート架橋剤と添加比により水溶性CDPを得て、その後構造評価を行った。次に、シリカ基材への水溶性CDPの水素結合相互作用を利用した修飾により、表面積層化を行った。1サイクルから10サイクルまで繰り返すことで、シリカ粒子表面に一定のCDP層の膜厚を有するCDP担持シリカ粒子を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来の方法から新たな作製手法に変更し、研究を進めており、進度としては少し遅れている状況である。新しい方法により、適切なジイソシアネート架橋剤と添加比により水溶性CDPを得ることができた。その後、NMR、電子顕微鏡観察や粒径分布測定により構造の評価を行った。次に、シリカ基材への水溶性CDPの水素結合相互作用を利用した修飾により、表面積層化を行った。また、各CDPの積層の間にアセトニトリルを用いた固着化処理を入れることで効率よく積層量を増加できることがわかった。この方法により、1サイクルから10サイクルまで繰り返すことで、シリカ粒子表面に一定のCDP層の膜厚を有するCDP担持シリカ粒子を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
水系分散CDPのgraft-to法を用いることでシリカ粒子表面に一定のCDP層の膜厚を有するCDP担持シリカ粒子を得ることができた。最終年度は、吸着剤のスケールアップによる収量を得ること。また、ハロゲン化芳香族分子の吸着性能を評価していく予定である。主な評価項目は、非極性溶媒中のポリ塩化ビフェニル、水中に微量含有する塩素化芳香族化合物類が対象になる。バルク撹拌およびカラム充填による二通りの吸着実験を実施する。その後、ガスクロマロ(液体クロマト)-マススペクトルを用いて残存化合物の定量を行う。
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Causes of Carryover |
新しい方法により、ポリ塩化ビフェニル吸着実験のための吸着剤の合成を行ってきたが、吸着実験に必要な量が十分ではなく、現在もスケールアップによる合成を進めている。本来26年度に使用すべきポリ塩化ビフェニル吸着実験の評価等に必要な使用額から、合成のみの使用額に変更したため、今回未使用額が生じた。また、成果発表に関しても、発表予定を変更したため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、別の方法で吸着剤の合成も進めており、次年度はこの経費に充てること、また、ポリ塩化ビフェニル吸着実験・評価等に必要な金額についても次年度に充てる予定である。具体的に使用予定の試薬としては、ポリ塩化ビフェニルを含有した高濃度汚染油の購入等が挙げられる。また、得られた研究成果については、学会の旅費等に充てることとしたい。
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Research Products
(8 results)