2014 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体分子の構造を利用した高選択的不斉光反応の開発
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25870437
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
西山 靖浩 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (00581430)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオン液体 / 有機光反応 / キラルテンプレート / エナンチオ区別 / [2+2]光環化付加反応 / 立体化学制御 / 不斉補助基 / キラル溶媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
不斉光反応は励起状態活性種の反応性が著しく高いことに加え、その寿命が非常に短いことから、その制御には困難を伴い、必ずしも高い選択性が達成できない問題点がある。一方、本研究課題では、構造を任意に制御できるイオン液体の特性に注目し、適切に構造をチューニングしたキラルなイオン液体を新規に合成し、それを利用することで、高選択的な不斉光反応の達成を目指している。昨年度までにイミダゾールカチオンを有する新規キラルイオン液体を合成したものの、全く不斉誘導を起こすことができなかった。そこで、本年度はキラルな1級アンモニウム塩に展開し、これをキラルなテンプレートとしてエナンチオ区別[2+2]光付加環化反応を検討したところ、30%程度と必ずしも不斉選択性は高くはなかったものの、不斉誘導を起こせることを見出した。それに加え、前駆体であるキラルアミンを利用した時と比較して、逆の立体化学を有する生成物が主生成物として得られることを見出した。この結果を基に、新規のキラルイオン液体を合成することを目的に、1級アンモニウム塩から4級アンモニウム塩と展開した。合成スキームとしてハロゲン化物イオンをアニオンとする4級アンモニウム塩を合成し、その後のアニオン交換法により目的のイオン液体を合成することを検討したが、メンチル基の立体障害により、4級アンモニウム塩の合成が思うように進められなかった。しかしながら、アルキル鎖長の検討を行うことで、ヨウ化物イオンをアニオンとする4級キラルアンモニウム塩の合成までが達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の検討により、キラルアンモニウム塩をテンプレートとすることで、前駆体であるキラルアミンを利用した時と比べ、逆の立体化学を有する生成物を主生成物として得られることを見出し、同一キラリティを有するキラルテンプレートを用いているにもかかわらず生成物のキラリティを作り分け可能という興味深い現象を見出した。しかしながら、その選択性は必ずしも高くはなく、またその原因も明らかとなっていない。また、キラルアンモニウム塩からキラルイオン液体への展開も合成に困難を伴っており、いまだ目的の合成には至っていない。しかしながら、合成には目途がついており、次年度には目的のイオン液体を利用した検討が可能となることが期待できる。よって、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた知見を基に、まずは目的のイオン液体の合成に注力する。その後、得られたイオン液体を利用してテンプレート並びにキラル溶媒として光反応を検討する。また、モデル反応であるジアステレオ区別反応では、メンチル基に導入した芳香環置換基の大きさやその電子密度を改良することで、更なる選択性の向上が達成できる。そこで、イオン液体においても、カチオンの構造に改良を行うことで、更なる選択性の向上を狙う。これらを通して、当初の目的である高選択的な不斉光反応を目指すと共に、生成物のキラリティ制御に関する知見を得ることも目指す。
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Causes of Carryover |
前年度までの結果を踏まえ、本年度に目的のキラルイオン液体合成を達成する予定であったが、当初の予定に反して合成の達成に時間を要してしまい、大幅に進捗が遅れてしまった。しかしながら、合成には目途がついており、次年度には予定の計画が達成できると期待できる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の推進方策に記載の通り、目的のイオン液体の合成を行う。また、それを利用した光反応の検討を行い、当初の目的である、高選択的不斉光反応の創成を目指す。まだ、それらの結果を学会や学術に報告予定であり、その旅費や論文掲載料等に使用する。
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Research Products
(7 results)