2014 Fiscal Year Research-status Report
レクチンタンパクは精神疾患の病態メカニズムに関与するか?
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25870494
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
梶谷 康介 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (10597272)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガレクチン-1 / レクチンタンパク / 海馬 / 介在神経 / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はレクチンタンパクの一種であるガレクチン-1の中枢神経における発現・機能に注目し、ガレクチン-1と統合失調症をはじめとする精神疾患との関係を明らかにすることである。2年時の計画として、1. ガレクチン-1欠損マウスと野生型マウスの海馬における介在神経の数をステレオロジー解析を用いて比較する、2.統合失調症モデルであるpolyriboinosinic-polyribocytidilic acid (poly i:c)をガレクチン-1欠損マウスおよび野生型マウスに投与し、行動・組織病理学的差異を検討する、3. 統合失調症患者および健常者の血中レクチンタンパク濃度の比較を挙げていた。以下に実績の概要を述べたい。 1.ガレクチン-1欠損マウスと野生型マウスの海馬における介在神経数のステレオロジー解析は完了した。この結果、parvalbumin陽性細胞、somatostatin陽性細胞、GAD陽性細胞、いずれの細胞数もガレクチン-1欠損マウスおよび野生型マウス間で差はなかった。ガレクチン-1陽性細胞の約80%がsomatostatin陽性細胞であることを以前報告していたが、ガレクチン-1そのものはsomatostatin陽性細胞数には影響いないことが明らかになった。この結果は以前の論文発表(Kajitani et al., Neuroreport, 2014 Feb 12;25(3):171-6) とまとめて第38回日本神経科学大会で発表する予定である。 2.poly i:cモデルを用いた研究に関しては諸般の事情により実施されていない(詳細は現在までの達成度で述べる)。 3.統合失調症患者の血清中のガレクチン-1濃度の研究に関しては、九州大学基幹教育院の倫理委員会の審査に合格し、研究準備を進めている。現在、福岡市内の3病院(益豊会 今宿病院、永寿会 川添記念病院、互舎会 筥松病院)と提携して患者のリクルートを行っている所である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ガレクチン-1のマウス海馬内での組織学的特徴はこの2年で概ね明らかにでき、ほぼ当初の目標を達成している。しかし、統合失調症モデル動物を用いたガレクチン-1と精神疾患に関する研究は進んでいない。理由として、1.申請者の所属が変わり(九州大学医学部から基幹教育院への異動)、その結果、研究環境を整えるのに時間を要していること、2.マウスを飼育していた前研究室の方針で飼育マウスの数を削減したこと、が挙げられる。統合失調症患者の血清中のガレクチン-1濃度の研究に関しては、提携先の選定と倫理委員会への申請が終了し、現在患者のリクルートを行っている。当初の研究計画としては初年時で研究協力施設の選定、および臨床研究参加者のリクルートを完成する予定であったが、倫理委員会の承認や研究協力施設との交渉に予想より時間を要したため、全体的にスケジュールが遅れ気味になった。本研究に関しては実験系も比較的簡易であり、サンプルが集まり次第、研究を遂行できる状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年次の方針として今年度できなかった統合失調モデル動物(poly i:cモデル)を用いた研究を実験環境が整い次第すすめたい。同モデルを用いて、ガレクチン-1欠損マウスと野生型マウスの海馬における介在神経の分布、両群マウスの行動解析(open field, novel objective recognition test, elevated plus maze, water mazeなど)を実施する予定である。 また統合失調症患者および健常者の血清中ガレクチン-1濃度の比較に関しては、目標サンプル数が集まり次第、ELISA法によって濃度測定を行う。同時に各患者の精神状態の評価、内服薬のクロルプロマジン換算量、性別、喫煙歴、有病期間などとの相関を検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は前年度の未使用予算を含め、90%以上の予算を使用したが15万円ほど予算が余った。これは研究室の移転のためにかかる費用として残していたが移転先の部屋の工事計画が遅延したため、結局使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究室移転の費用に充てたり、また実験で使用する消耗品(ピペットのチップ、注射針、シリンジ、採血管など)に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)