2015 Fiscal Year Annual Research Report
摂食・嚥下障害の包括的診断法とリハビリテーション法の確立‐口腔癌症例への応用‐
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25870512
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
星野 亜紀 (金城亜紀) 九州大学, 歯学研究科(研究院), 研究員 (30444821)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 摂食嚥下 / 口腔癌 / 機能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会を迎えたわが国において、摂食嚥下障害は重大な関心事となっているが、いまだにエビデンスに基づいた臨床研究の報告が不足している。特に、口腔外科で治療する口腔癌治療後の摂食嚥下障害に対する機能評価やリハビリテーションの有用性、妥当性に関する検討も不十分である。本研究では、人間が生涯にわたり安全に、かつ口から食べる楽しみを維持する観点から、摂食嚥下障害の的確な診断、治療、リハビリテーション、日常の食事への反映は重要と考え、Ⅰ.摂食嚥下機能の複雑な調節のメカニズムの解明、Ⅱ.包括的診断法の検討、Ⅲ.摂食嚥下障害に対する新たな戦略としてのリハビリテーション法、Ⅳ.摂食嚥下障害の潜在的リスクの検索、Ⅴ.口腔癌治療に伴う摂食嚥下障害に対する診断法、リハビリテーションの妥当性についての検討につながるものとして計画した。 昨年度までに、同意の得られた健康成人と摂食嚥下障害を呈した口腔癌術後患者のVF、VEの定性的評価を分析した。VEの有用性の報告が増えてきているが、口腔癌患者の場合は、咽頭期嚥下障害の原因が口腔内にあるため、口腔期から食道期まで一連の流れとして評価できるVFの方が有用性が高いと考えられた。本研究の対象患者の中には、VEでは誤嚥がなかったものの、VFで誤嚥を認めた例もあり、口腔期を含めた詳細な観察の必要性について、さらなる検討の必要がある。 今年度は、さらに3次元運動解析ソフトを用いて定量的評価を加え、定性的評価との比較検討を行った。摂食嚥下障害を呈した口腔癌術後患者では、特に舌根の挙上、舌骨の動き、喉頭の挙上において術前と比べ運動不良が明らかで、定量的評価でも同様の結果が得られた。本結果は、機能障害を予測し、治療計画やリハビリテーション、患者説明を行う上で、重要な点であり、治療法選択や治療後の患者の生活に大いに影響を与える可能性が高いと考える。
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