2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870636
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
河野 良平 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70569110)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗アレルギー作用 / 肥満細胞 / 山椒 / 脱顆粒抑制 |
Research Abstract |
本研究では、花粉症などのI型アレルギー疾患の患者数は増加の一途を辿り、社会的な問題となっていることから、山椒由来の抗アレルギー成分を探索し、その作用機序を解明することを目的とした。初年度はラット好塩基球性白血病細胞株RBL-2H3を用い、抗原刺激によって惹起される化学伝達物質遊離(脱顆粒)反応を抑制する作用を指標として山椒抽出物のスクリーニングを行った。抗DNP(ジニトロフェニル)-IgE抗体で一晩感作したRBL-2H3を抗原となるDNP-BSAで刺激して脱顆粒反応を惹起し、化学伝達物質とともにβヘキソサミニダーゼが細胞外へ放出されるので、βヘキソサミニダーゼ活性を脱顆粒の指標とした。乾燥山椒のメタノール抽出物を水で溶解後、ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチルで順次転溶し、それぞれの抽出物で脱顆粒抑制作用を検討したところ、ジクロロメタン抽出物に脱顆粒抑制作用が見られた。そこでジクロロメタン抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分画し、Fraction 1~13を得た。これらの分画物の内、Fraction 2に強い脱顆粒抑制作用が見られ、この主成分が化合物 1であることが判明した。化合物1で脱顆粒抑制試験を行ったところ、その濃度依存的に脱顆粒を抑制することが判明した。現在、この化合物1の構造を質量分析装置、NMR装置を用いて解析している。また、化合物1に次いでFraction 1にも脱顆粒抑制効果があることが判明した。次年度以降検討する予定である山椒抽出物の抗アレルギー作用の機序を解明するために、脱顆粒の際に起こる細胞内カルシウム濃度上昇を捉えるためのイメージング法や脱顆粒そのものを捉えるイメージング法の予備的実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は、ラット好塩基球性白血病細胞株RBL-2H3への抗原刺激による化学伝達物質遊離(脱顆粒)に対する抑制作用を指標として、山椒から各種有機溶媒による抽出を行い、カラムクロマトグラフィーによる分画を繰り返し、スクリーニングを行い、高速液体クロマトグラフや液体クロマトグラフ質量分析装置、核磁気共鳴装置による脱顆粒抑制成分の組成分析、構造解析を行うことであった。実際には脱顆粒反応を抑制する化合物1を単離し、Fraction 1もまた脱顆粒を抑制することを突き止めた。現在、これらの組成分析ならびに構造解析を行っているため、当初の計画はおおむね順調に進展していると考える。また平成26年度以降の計画である山椒抽出物の作用機序の解明についても準備を進めており今後の研究計画の遂行に支障はないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
脱顆粒抑制作用を有する化合物1の構造解析と並行して、Fraction 1の分画・精製・分析を行う。また当初の平成26年度の研究計画である、抗アレルギー成分の作用機序の解明に着手する。主に化合物1を使用し、抗原抗体反応によって起こる細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を直接的に観察、解析し、抗アレルギー成分による細胞内カルシウム濃度上昇抑制作用の有無を判断する。また、脱顆粒の際に起こる膜ラフリング等への影響も同様に解析する。これらの検討は共焦点レーザー顕微鏡や蛍光顕微鏡、走査型電子顕微鏡を駆使して行う。さらに、カルシウム流入抑制作用の検討の結果から、カルシウム依存型か非依存型のどちらのシグナル伝達経路に化合物1が影響しているかを判断する。カルシウム濃度上昇が起きない場合はカルシウム依存型経路に、カルシウム濃度上昇が起きる場合はカルシウム非依存型経路に化合物1が作用していると考え、それぞれに関連する蛋白質や遺伝子の発現を分子生物学的手法によって解析し、詳細なシグナル伝達への影響を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に抗体を購入し、分子生物学的解析の予備実験を行う予定であったが、抗体の輸入が予定以上に遅れ平成25年度中に購入することができなかったため、この分子生物学的解析に使用する他の消耗品類等の購入も見合わせた事が次年度使用額が生じた理由である。 平成26年度は化合物1とFraction 1の精製、分析、構造解析等を行う。また抗アレルギー成分の作用機序の一端を解明するためにRBL-2H3を用いた実験を行う。前者の遂行にあたり抽出試薬や高速液体クロマトグラフィーに関わるカラム、実験器具などを購入するために研究費を使用する。また後者の遂行には培養細胞を用いるための培養関連の培地やピペット等の消耗品類、カルシウムイメージングのための蛍光試薬、分子生物学的解析のための抗体等や試薬類を購入する予定である。
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