2015 Fiscal Year Annual Research Report
地域と図書館を結んだ戦後移動図書館の理念と成立に関する実証的研究
Project/Area Number |
25870685
|
Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
石川 敬史 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (90634270)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 移動図書館 / 自動車文庫 / 図書館史 / 社会教育 / 文化運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,1950年代を中心に公共図書館が自動車という近代的装置で図書館と文化を運んだ移動図書館活動を研究の対象とし,地域・住民と図書館とをどのように結び,地域に何をもたらしたのかを実証的に明らかにした。平成25年度からの調査を踏まえながら,平成27年度は,(1)徳島県憲法記念館(徳島県立図書館)による「文化バス」の資料収集と分析,(2)岡山市立図書館における戦前期からの動く図書館(多様な文庫)やリヤカー図書館(家庭配本)等に関する資料収集と分析,(3)神奈川県立図書館における「貸出文庫」の活動,さらには(4)特種用途自動車としての「移動図書館車」の分析,(5)移動型書店や全国を巡回する「おはなし隊」などの見学,を通して「地域」を視点としながら,戦後期からの移動図書館の理念を踏まえた現代的な移動図書館実践の課題も射程に入れつつ研究を積み重ねてきた。 平成25年度から平成27年度まで積み重ねた本研究により,戦後初期の移動図書館は,図書館が「移動」する活動としての位置よりも,地域の青年団の活動(高知県立図書館)として位置され,設置母体の理念(徳島県憲法記念館)を運ぶ活動であった。同時に,数にとらわれず利用者の裾野を広げ(岡山市立図書館),図書館員が地域に自然と溶け込むことで,図書館員の図書館に対する想いも運んでいたことが明らかになった。こうした戦後の移動図書館活動の源流は,現在の移動図書館活動を再評価することにもつながる。 本研究の成果は,一次資料を中心に各地の資料を鋭意収集・分析し,実証的な研究成果として発表した。しかし,鹿児島県立図書館(自動車文庫),神奈川県立図書館(貸出文庫),大阪府立図書館(自動車文庫)などについては,資料の収集・分析に留まっている。今後は,本研究で収集した資料を活かし,戦後移動図書館論を整理し,移動図書館の現代的意義を追究したい。
|
Research Products
(7 results)