2013 Fiscal Year Research-status Report
ホームヘルプ事業草創期に原崎秀司が受けた教育的・思想的影響に関する研究
Project/Area Number |
25870694
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
中嶌 洋 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 講師 (00531857)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 原崎秀司 / ホームヘルプ事業 / 全日本方面委員連盟 / 方面事業 / 家庭養護婦派遣事業 / 方面時報 / 方面映画 |
Research Abstract |
2013年度では、ホームヘルプ事業の先覚者である原崎秀司の思想及び実践に着目し、欧米社会福祉視察研修前後にどのような出来事や実体験があり、それらからいかなる影響を受けていたのかを明らかにすることが本研究の目的であったため、まず、博士論文「日本における在宅介護福祉職形成史研究」を2013年9月、(株)みらいより、単著として刊行し、ホームヘルプ事業史全体を整理した。続いて、2014年2月には、ホームヘルプ事業の発祥地である長野県上田市において尽力された10人のキーパーソン(原崎秀司を含む)に焦点化した単著を、久美株式会社より刊行し、人物史研究を進めた。 2014年度では、原崎が受けた思想的・教育的影響に迫るべく、彼の全日本方面委員連盟(旧厚生省内)書記時代に着目した。手薄であったこの頃の第一次資料を収集すべく、2014年1月、日本社会事業大学図書館、東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター(明治新聞雑誌文庫)、大阪府立大学ヒューマンサイエンス系図書室などで第一次資料の発掘に努めた。結果として、『方面時報』や『長野県厚生時報』などの貴重な資料が得られ、これらから、①盧溝橋事件や日中戦争が勃発した1937年当時、方面事業の全国化を目ざしていた全日本方面委員連盟は、地域差や雑誌・映画などのメディア媒体を重視していたこと、②同連盟書記として『方面時報』を編集した原崎秀司は,ホームヘルプ事業の先覚者としてのみならず、方面事業にも精通しており、この経験が欧米視察後の成果につながったこと、③原崎が真の豊かさを政治・経済・思想の強化に求めたこと、④現場視察や調査を繰り返し、実情把握に努めたこと、⑤映像や音声に依拠したメディアの活用により人々の意識を啓蒙したことなどの知見を得た。こうした内容の論稿を作成し、日本社会福祉学会機関誌『社会福祉学』に投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原崎秀司に関する学術書2冊(『日本における在宅介護福祉職形成史研究』(株)みらい、2013年及び『ホームヘルプ事業草創期を支えた人びと――思想・実践・哲学・生涯』久美株式会社、2014年)を刊行できた。また、口頭発表でも、第61回日本社会福祉学会全国大会(発表題目:「歴史的研究における量的分析の可能性とその限界――テキストマイニングによる原崎秀司の思想的特徴を事例として」於 北星学園大学)、並びに2013年度日本社会福祉学会関東部会(発表題目:「草創期における家庭養護婦派遣事業と家庭養護婦――担い手の背景と実践的課題の検証を中心に」於 日本社会事業大学)で発表し、研究成果を公表でき、活発な意見交換もできた。この他、社会事業史学会機関誌『社会事業史研究』第45号や『帝京平成大学紀要』第25巻でも学術論文や紀要論文を掲載することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現地調査を数度実施したことや、書籍を出版社との緻密な交渉を通じでまとめたため、時間がかかり、次年度に使用金額が生じてしまった。これらを新たな聞き取り調査や資料収集に生かし、今後は、原崎秀司に特化した研究をさらに進めたい。具体的には、書籍(『シリーズ福祉に生きる 原崎秀司』)が2014年8月に、大空社より刊行予定となっている。同書では、原崎の趣味であった短歌や手薄であった戦前期の彼の思想及び実践を、旧厚生省内全日本方面委員連盟を中心に明確にしようと考えている。一方、彼が1953~1954年に行ったとされる欧米社会福祉視察研修の成果をまとめた『報告書』が未だに発見されていないため、イギリス、スイスでの海外調査の他、日本国内でも、例えば厚生労働省や地元図書館などでの収集・発掘作業を地道に進めたい。他方、日本赤十字社長野支部事務局長を務めた晩年の原崎の特徴を明らかにすることも重要課題であると考えられるため、長野県庁図書室や原崎邸などでの資料収集及び聞き取り調査を継続的に行いたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
授業や通常業務の合間を縫って、長野県を中心に現地調査を行ったため、時間的制約があった。また、2冊の図書と1冊の資料集を刊行するに至ったが、いずれも各出版社との緻密な交渉の末に実現したことであり、こちらの作業でもかなりの時間を割いてしまった。こうしたことから、次年度の使用金額が生じてしまった。 今年度は、上記の残額を新たな聞き取り調査や資料収集の際に生かしたい。原崎秀司に特化した研究を今後もさらに進める予定である。具体的には、原崎の旧厚生省内全日本方面委員連盟時代を中心に明確にしようと考えている。一方、彼が1953~1954年に行ったとされる欧米社会福祉視察研修の成果をまとめた『報告書』が未だに発見されていないため、イギリス、スイスでの海外調査を行う際に使いたい。他方、日本国内でも、例えば厚生労働省や地元図書館などでの収集・発掘作業を残額を活用して地道に進めたい。さらに、日本赤十字社長野支部事務局長を務めた晩年の原崎の特徴を明らかにすることも重要課題であり、長野県庁図書室や原崎邸などでの資料収集及び聞き取り調査を継続的に行いたい。
|