2014 Fiscal Year Annual Research Report
ホームヘルプ事業草創期に原崎秀司が受けた教育的・思想的影響に関する研究
Project/Area Number |
25870694
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
中嶌 洋 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 講師 (00531857)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ホームヘルプ事業 / 方面委員制度 / 社会福祉思想 / 原崎秀司 / 創造性 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去の史実や実話から知恵・教訓を得るべく、戦後日本のホームヘルプ事業の先覚者である原崎秀司の思想及び役割に焦点化し、第一次資料を基に彼の視点や功績を明確にすることを目的とした。彼直筆の4冊の日誌、十数本の論稿(機関誌掲載記事)、地元新聞記事などを用い、3つの課題に取り組んだ。課題①の戦前の彼の思想では、日誌『遠保栄我記(新正堂版)』を紐解いた結果、先妻を亡くし、一人親家庭の父親として苦悩したことや、何冊もの書籍から影響を受け、生活規範や実践力を重視していたことを明らかにした。課題②の原崎の哲学思想については、学生時代の恩師、三木清に傾倒し、哲学的影響を受けていたこと、カントやヘーゲルを学んだことが主体的に物事を考え、創造性を発揮するという思想形成につながったことを明確にした。課題③の方面委員制度との関わりについては、彼が旧厚生省内全日本方面委員連盟書記だったとき、機関誌『方面時報』の編集をしたり、PRのために方面映画『方面動員』を製作・上映し、多くの人々の意識を啓発したことを明らかにした。これらにより、彼が1953~1954年に欧米社会福祉視察研修を通し見聞した、スイス、イギリスなどの先進諸国の福祉制度・事業をただ単に導入したのではなく、彼なりに思考を働かせ、当時の日本の実情に適合するように考案していた結果であることが認識できた。 こうした原崎の奮闘をもたらした原点には、彼自身が日々の生活を通して実感した問題認識や、創造性や主体性の活用により生活改変・生活向上を志向しようとする実践力があった。彼はホームヘルプ事業と言う当時の先進的な事業・制度に感嘆しただけではなく、先人の優れた考え方や生き方を摂取し、実生活に役立てようと試みた。このように、過去の先例を通じ、各人の希望を創出する力の源泉になることこそが、本来、社会福祉思想を学ぶことであり、歴史研究が果たす使命である。
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