2013 Fiscal Year Research-status Report
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25870721
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
前田 美千代 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (70388065)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 19世紀ラテンアメリカの独立 / 民法典編纂事業 / 中世スペイン法思想 / フランス啓蒙思想 / フランシスコ・デ・ビトリア / 七部法典 / カディス憲法 / アパツィンガン憲法 |
Research Abstract |
ラテンアメリカにおける民法典の編纂事業は、1826年ハイチ民法典により初めて達成され、それに続く二番目の法典化となるのが、1827~29年メキシコ・オアハカ州民法典である。この法典は、スペインとポルトガルの支配を受けた地域では初の民法典にあたるが、1835年の連邦制崩壊とともに効力を停止し、その後、メキシコの法典は19世紀後半の1870年連邦民法典まで達成されることがなかった。この40年間の空白は何を意味するのだろうか。 1855年のチリ民法典の完成とともに、ラテンアメリカの法典化運動が成熟期を迎えるなか、メキシコにおける法典化運動は19世紀末まで完成しなかったことになる。その理由として、宗教的権威の影響力の低下とともに、フランスのメキシコ出兵や米墨戦争といった外国の圧力および国内反対勢力に対しての国内世俗的権力の独占が19世紀末になってようやく達成できたことが挙げられる。連邦当局による権力独占後は、連邦各州における1870年連邦民法典の継受すら行われた。オアハカ法典が早熟過ぎたとするならば、それはどのような意味で早熟であったのだろうか。 本年度の研究は、独立運動直前期に始まりオアハカ法典として結実するメキシコの法典化運動に関して、法典化の前提要件の生成過程から振り返り、オアハカ法典ならびに同時期に起草されたサカテカス州民法典草案、ハリスコ州民法典第一部草案へのその投射を分析し、メキシコひいてはラテンアメリカの民法史におけるその位置づけと評価を行うことを目的とした。この目的達成のために、中世スペイン法思想にさかのぼって、法典化前提要件の生成過程とともに、これら三つの法典および草案の時代的・思想的な起草背景を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
例えば、メキシコにおける民法典編纂事業は、同国の政治的不安定さにより、独立期から現在までの間を、大きく三段階の時代区分に分けて検討する必要がある。また、連邦制をとっていた時期では、州ごとの民法典に注目に値する個別の特徴が存在する。 それゆえ、19世紀の独立期ラテンアメリカの民法典編纂事業は、国別に検討するのは当然であるとしても、国ごとの個別の特徴ゆえに、さらに時代区分や政治的区分をも踏まえて検討する必要がある場合が存在する。
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Strategy for Future Research Activity |
ラテンアメリカ諸国の民法典編纂事業は、国によっては、一人の起草者の功績によるところが大きいため、同人による民法典編纂以外の業績もふまえて検討することを予定していた。その場合には、当該起草者の伝記に近い研究となろう。しかし、客観的事実としてラテンアメリカ諸国の民法の法典化がどのように行われたのかを提示することが、本研究の第一義的課題であるので、民法典編纂に絞って論じることとし、むしろ、国別の時代区分や政治的区分が強固に存在する場合には、それらの影響の度合いを踏まえることに注力していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月のラテンアメリカ(ブラジル)渡航の国外旅費について、滞在国がブラジルのみとなり、また、滞在日数も少なくなったため、その差額が次年度使用額として発生した。 本年度の国外旅費において、滞在国と滞在日数が増加する予定であるため、その際の増額分として使用する。
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