2014 Fiscal Year Research-status Report
モンゴルの伝統食「馬乳酒」製造に関する伝統的知識の科学的検証と応用
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25870806
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
ツェレンプル バトユン 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 研究員 (30649843)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Fermented horse milk / GPS / Traditional food / Herder |
Outline of Annual Research Achievements |
モゴッド郡で馬乳酒用に搾乳するウマ25頭を放牧する牧民N氏所有のメスウマ3頭にGPSを装着し、馬乳酒が製造された2013年6月25日から9月25日までの位置を追跡調査した。そのうち最も継続的にデータが取得できた1頭の1分間隔の位置データを解析した。調査期間中に牧民N氏のゲル(移動式住居)は7月15日に約3km 離れた場所に移動したため、春営地滞在時期(6月25日~7月15日、21日間)と夏営地滞在時期(7月16日~9月21日、65日間)に期間を分けて解析した。定期的に搾乳される時間帯(搾乳時間帯)と、夜間を中心に長時間ウマが自由に行動できる時間帯(非搾乳時間帯)に分けて、積算移動距離と搾乳が行われるゲルからの最大直線距離を算出した。 子ウマだけが朝から一日の搾乳終了時までつながれる馬乳酒製造期間中、ウマは朝8時頃(7:42±3分、平均±SE)にゲル近くに集められ搾乳され、その後放牧されるが日中は数時間おきに集められ搾乳を繰り返された。日中最後の搾乳時刻は15:59±23分であり、搾乳時間帯と非搾乳時間帯の継続時間はそれぞれ、8.3±0.4、15.4±0.4時間であった。単位時間当たりの積算移動距離は春営地、夏営地滞在時期とも搾乳時間帯(513±58 m/h, 729±32 m/h)よりも非搾乳時間帯(926±28 m/h, 935±33 m/h)で長かった(p<0.0001, 対応のあるt検定)。非搾乳時間帯にウマがより遠い場所まで移動していたことから、ゲル付近に子ウマをつなぎ、短い間隔でメスウマの搾乳をおこなう手法は、搾乳時間帯におけるメスウマの利用範囲を制限していることを示唆する。一方で、非搾乳時間帯には母子ウマが自由に行動していることや、N氏へのヒアリングによると馬乳酒製造期間以外(8ヶ月以上)は放牧されている馬群に人間が干渉することは少なく、週に1度ほど様子を見に行くだけであるということから、馬乳酒用のウマは家畜でありながら極めて自然に近い状態で飼育されていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Our collaboration with the scientists in the various research fields such as plant ecology, animal ecology, soil science, water resource, food science and cultural anthropology. In the last year we made collaboration with specialists of soil and ground water and we conducted field survey in the study area.
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Strategy for Future Research Activity |
馬乳酒の製造に関するTEK の科学的検証のための牧畜気象観測点におけるフィールド調査を継続。 TEKと科学的成果の統合による地域に適合した馬乳酒製造法を開発する。 馬乳酒製造法に含まれる予定の項目:ウマを放牧する草地の選定方法(馬乳酒製造に適する草の種類と量)、ウマの搾乳期間、搾乳頻度、搾乳方法、生乳の冷却方法、発酵容器の選定、貯蔵時の温度管理、撹拌の頻度、回数、時間、道具、スターター(乳酸菌・酵素)。 このようにして得られた馬乳酒製造法を、研究所の気象台のネットワークを利用して、広報誌などで成果を公開する。
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Research Products
(5 results)