2014 Fiscal Year Research-status Report
象徴天皇制形成期の総合的研究-「稲田周一手記」を中心に-
Project/Area Number |
25870963
|
Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
河西 秀哉 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (20402810)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 象徴天皇制 / マスメディア / 知識人 / 戦争責任論 / 皇居 / 昭和天皇実録 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当該期の天皇制をめぐる言説・メディアにおける表象などを中心に史料収集を進め、その分析と論文・書籍の執筆を行った。成果として、以下の四点が挙げられる。 第一に、昨年度に引き続き皇居という空間の検討を通じて、象徴天皇制意識を明らかにしたことである。開放=国民に開かれたという認識が、次第に文化=ナショナリズムに転化していく点を皇居をめぐる言説の中で明らかにした。この点については2015年度中に『皇居の近現代史(仮)』として出版予定である。 第二に、敗戦直後のマスメディアと象徴天皇制との協調関係について解明を行ったことである。『毎日新聞社内報』などの分析を通じて、敗戦という危機の中で天皇制がいかに象徴天皇制へと転化し、その中でマスメディアが大きな役割を果たしたのかを明らかにした。この点については、「敗戦直後の天皇制の危機とマスメディア」という論文を『JunCture』第6号に掲載した。 第三に、戦争責任論と象徴天皇制の関係性について論じたことである。従来の研究が戦争責任論を象徴天皇制形成期に限定していたのに対し、より長期的スパンに立って論じることで、戦争責任論が「象徴」概念に内実を与えていく様相を、知識人などの言説を検討することで明らかにした。これは「戦争責任論と象徴天皇制」というタイトルで、歴史学研究会近代史部会大会準備会で報告し、2015年度の大会で報告する予定である。 第四に、2014年に完成し、公表された「昭和天皇実録」の分析を行ったことである。これは昭和天皇の生涯について、宮内庁がまとめて編さんした記録物である。歴史学の成果や新出史料が豊富に利用されているが、一方でそれが活かされていない部分もある。どの記述が新しい成果であるのか、そして今後の課題は何であるのかを論じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、研究の方針転換により遅れが生じたが、新たな史料分析などを通じて、研究成果を公表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、象徴天皇制形成期の総合的な把握である。政治史・法制度史と思想史・社会史の分離が目立つこの研究分野において、それらの架け橋となるような総合的な研究を展開できればと考えている。新たな史料発掘をより進めながら、今年度も昨年度の成果を継続させていく。
|
Causes of Carryover |
2014年度は大学学務などが多忙であったため、予定よりも史料調査の日程を組むことができなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料調査、学会報告・参加などの出張の予定。
|
Research Products
(2 results)