2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870980
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
笠島 洋一 広島修道大学, 経済科学部, 准教授 (30583166)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / メカニズム / 公平性 / 効率性 / 耐戦略性 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、2014年9月11日に岡山大学の現代経済セミナーにおいて「Strategy-proofness and the random dictatorship rules」(阿武秀和氏との共同研究)についての研究発表(単独)を行なった。これは、昨年度より継続して行なっている研究であり、公共財の確率的選択のあり方を理論モデルを用いて公理的に考察したものである。複数の公共財の候補の中から人々のために公共財を1つ選択する際、公平な選択を行なうためにくじ(確率的な選択)を用いることが考えられる。そこで、そのくじをどのように設計するかを決めなければならない。任意の問題に対して、くじを指定する関数を選択ルールと呼ぶが、この選択ルールの持つべき望ましい性質として「効率性」(選択ルールはパレート効率的なくじを選ぶ)、「耐戦略性」(偽りの選好を表明することが得にならない)、そして「有限性」(選択ルールがとる可能性のあるくじは有限個である)を考え、それらの性質を満たす選択ルールの特徴づけを行なった。一般に、選択ルールの性質を弱めつつ、同じ選択ルールの特徴づけを行なうことができれば、その結果は以前のものよりも強い結果と評価されることが多いが、この問題においても「効率性」や「有限性」の性質を十分に弱めた上で、そしてそれらの性質を弱めることの意味を詳細に検討した上で、以前と同じ選択ルールの特徴づけが可能であることを明らかにすることができた。 第二に、2014年10月23日に早稲田大学大学院社会科学研究科の院生・教員合同セミナーにおいて「経済の制度設計における諸問題について」の講演(単独)を行なった。ここでは、本研究課題でもある公平な配分メカニズムの設計に関する研究の概要を説明し、またこれまでに本研究課題の中で考察してきたいくつかの事柄についても報告をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「公共財の確率的選択問題」(複数の公共財の中から人々に公共財を1つ選択する際に、確率的な選択を考える問題)については、阿武秀和氏との共同研究をこれまでに複数回にわたり研究発表をすることができており、発表時に受け取る様々なコメントなどを通じて、この問題に対する理解を大いに深めることができている。特に、確率的な選択を行なう際の「効率性」や「有限性」といった選択ルールの性質を弱めることの数理的な可能性や、経済学的な意味について様々な角度から検討できていることは重要な進歩であると思われる。また、この問題における別の研究課題として、「資源単調性」、「人口単調性」、「選好単調性」などの性質の含意を分析する上での知識等がこれまでの研究で十分に身についてきている。「非分割財の確率的配分問題」(分割することができない財を人々に配分する際に、確率的な配分を考える問題)における「効率性」、「耐戦略性」、「整合性」などの含意については、「公共財の確率的な選択問題」における研究成果などを通じて、少しずつ分析の方向性が明らかになりつつある。特に、2014年6月にアメリカのロチェスター大学において開催された資源配分メカニズムに関するワークショップに出席し、これらに近い問題を研究している研究者と多くの交流をもつことができたことによって、この問題に対する様々な視点を得ることができた。「権利問題」(人々の持つ権利の総和が配分できる資源の量を超えている場合に、その資源を人々にどのように配分するべきかを考える問題)については、これまでに分かっていた不可能性定理が生じる状況が、もう少し広い範囲(類似する公理)のもとでも成立することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、「確率的選択・配分に関する問題」や「権利問題」などの資源配分問題における公平なメカニズムのあり方を中心に分析を行なう。これらの問題に対する最新の研究成果を調査するとともに、海外を含む他大学への研究訪問を通じて、研究課題の理解を深め、研究の総括を行なう。研究訪問先としては、本研究課題に関連した研究が多く行なわれている大阪大学、京都大学、ロチェスター大学、スタンフォード大学などを考えている。また、2015年8月24日~26日に早稲田大学で行なわれるゲーム理論の国際学会である「East Asian Game Theory Conference 2015」での研究報告を検討している。この学会にはゲーム理論や本研究課題に関連した研究を行なっている多くの国内外の研究者が集まることが期待できるので、研究交流を通じて様々な意見交換を行なうことができる可能性が高い。 「公共財の確率的選択問題」については、阿武秀和氏との共同研究の総括を行なうとともに、「資源単調性」、「人口単調性」、「選好単調性」などの性質についても、それらの選択ルールに対する含意の分析を行なう。「非分割財の確率的配分問題」については、特に人々が複数の財を受け取る状況における「効率性」や「耐戦略性」の含意について詳細に検討を行なう。「権利問題」については、昨年度に明らかになった広い範囲での不可能性が生じる状況などについての検討を引き続き行なう。 これらの課題に対し、研究発表や他大学への研究訪問などを通じて、多くの研究者と意見交換を行ない、それらを踏まえた上で、国際雑誌への投稿・掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
旅費など概ね予定通りに使用したが、2014年度に購入を予定していた一部の物品やソフトウェアなどについて、次年度に購入しても研究の推進に影響を与えないと判断したため、それらを次年度に購入することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度の未使用額については、研究の推進に必要となる物品やソフトウェア(図の作成や数式の入力などで必要となるもの)などを2015年度に購入する予定である。 その他2015年度においては、2015年8月24日~26日に早稲田大学で行なわれるEast Asian Game Theory Conference 2015への参加や、他大学への研究訪問(大阪大学、京都大学、ロチェスター大学、スタンフォード大学など)において使用することを計画している。また、研究の総括に必要となるソフトフェア、パソコン周辺機器、消耗品などを購入する予定である。
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Research Products
(2 results)