2013 Fiscal Year Research-status Report
空気が関与する物理現象に対する子どもの説明と知識の発達的研究
Project/Area Number |
25871018
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | 東北文教大学短期大学部 |
Principal Investigator |
永盛 善博 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 講師 (20507967)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 知識構築 / 物理現象 / 因果的説明 / 幼児 / 児童 |
Research Abstract |
本研究の目的は,周囲で生じる物理現象に対して,なぜその現象が生じたのか因果的説明する際,その説明様式が幼児から児童にかけてどのように変化するか,そしてその説明の際に関連してくる知識・概念がどのように構築されるのかを明らかにすることである。その目的を達成するため,幼児,児童に対して個別インタビュー形式の調査で,種々の物理現象を見せた上で,なぜこのようなことが起こったのか尋ねる。 今年度は,調査に先立つ準備段階として,①課題作成のための資料収集・分析や,②インタビューで子どもの説明をうまく引き出す手法の検討,③子どもが対話の中で学ぶことに関する資料の収集,④先行研究の新たな視点からの分析を行った。 ①については,幼児,児童向けの科学あそびや科学マジックの書籍や,子どもが大人に尋ねる質問などを取り扱った書籍を収集し,課題作成の参考とした。②については,子どもが自分の説明に自信を持ち,より話したくなるような雰囲気づくりや応答の仕方,質問の仕方などを,教育現場における発問に関する書籍やコーチングの書籍などを参考に検討した。③については,本研究の仮説が「子どもは説明を行う中で知識を構築する」というものであるため,対話の中での学びに関する書籍を中心に収集を行った。申請者のこれまでの研究では,この知識構築のという側面に焦点を当てていなかったため,この分野の基本文献から集めていった。最後に④については,これまでの研究では説明の側面に焦点を当ててきていたものの,本研究では知識の側面にも焦点を当てるため,先行研究をこの側面から再分析した。より具体的には,子どもの空気概念の発達を取り扱った研究について概観した。さらに,インタビューという特殊な状況だけでなく,子どもの日常の言動からも子どもの世界観に迫るため,子育て絵日記ブログ「うちの3姉妹」に見られる子どもの特徴的な言動を分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
その最たる理由は,今年度に調査を実施できなかったことが挙げられる。今年度の研究計画としては,資料の収集・分析だけでなく,第1回目の調査も行う予定であった。資料の収集・分析については,ある程度の進展が見られたものの,その分析をもとにした調査の実施には至らなかった。これは,資料の収集・分析に予想した以上に時間が必要でとなったことが挙げられる。 資料の収集・分析において,特に,本研究で新たに取り入れた「対話の中での知識構築」という側面については,これまで申請者が焦点を当ててきた研究とは領域を異にする部分が多かった。資料の精読だけでなく,そもそもの資料集めにおいても,どのような文献が存在するか,どの文献がこの分野の中心的位置づけとなっているのかといったところからの出発であった。 本研究は,この「対話の中での知識構築」という部分を重要な仮説としており,この仮説を検証することができる調査課題を作成する必要がある。そのため,今年度は,調査実施に先立って,この資料取集・分析に時間を費やした。結果として,研究計画よりは若干の遅れが見られるものの,研究の目的をより着実に達成するための遅れであると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として,①資料の分析に基づいた調査,②小学校学習指導要領における空気概念の取り扱い学年の変遷の分析,③教育現場での空気概念に関する教授の状況の分析、④教育現場外で子どもが空気概念に触れる機会(科学読み物や科学イベントなど)での空気概念の取り扱いの分析が挙げられる。より具体的には,②③④を同時に進行し、これらの分析をもとに①を行う。 ①について、本研究の仮説が「子どもが説明する中で、説明の必要に駆られて知識を構築する」というものであるため、この仮説を検証しうる調査課題を準備し、幼稚園や保育所、小学校への調査協力を求めた上で、調査を実施する。なお、調査課題の準備には、インタビューの質問内容や子どもが説明を行った際のインタビュアーの応答もある程度精査し、子どもが説明しやすく、自信を持って新たな知識構築を行えるインタビューの方法の考案も含んでいる。 次に②について、学習指導要領で空気概念の取り扱い学年の変遷を分析することにより、教育分野ではおおむね何年生でどのような空気概念が形成されると期待しているのかを明らかにする。この分析により、子どもの空気概念の発達の様相をより詳細にすると同時に、調査課題作成のための手がかりとする予定である。 最後に③④については、昨年度執筆した論文の継続み位置付けられるものである。昨年度の論文においては、空気概念に関する先行する認知発達研究の概観を行った。しかし、発達研究は教育の影響も考慮して始めて成立するものである。端的に言えば、特定の学年において空気概念について学校で教授がなされれば、その前後で子どもの空気概念が変容することが当然と考えられる。それゆえ、実際の教育現場での空気概念の教授状況や教育現場外での空気概念の取り扱いを分析し、その内容を踏まえた発達研究・分析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
その大きな理由は,研究計画にあった調査を実施できなかった点にある。調査を実施するにあたっては,機材・道具の準備,ご協力いただく幼稚園,保育所,小学校への通信・謝金等が必要となる。しかし今年度は,調査課題の作成に先立った先行研究等の詳細な分析が,当初計画していた必要かつ重要であると考えたため,こちらを優先した。結果として,調査関連の費用が今年度は出なかった。 理由欄で記したとおり,調査実施を行うことにより,当初の予定どおりの使用額が生じることとなる。したがって,使用計画としては,翌年度行う予定の調査や資料の収集・分析に加え,今年度実施できなかった調査を実施する予定である。
|
Research Products
(3 results)