2013 Fiscal Year Research-status Report
創薬分野における産学連携システムの空白領域検証と、新規事業モデルの創出研究
Project/Area Number |
25871070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
新村 和久 公益財団法人がん研究会, がん研究所, 研究員 (30649223)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 産学連携 / 知的財産権 / 創薬 |
Research Abstract |
①アカデミア発創薬における知財戦略を考える為に、実際に上市されている分子標的抗がん剤を対象に各種データ解析を行った。まず、既承認分子標的抗がん剤41剤について、Thomson Reuters Cortellisを用いて、特許権・契約・文献・企業ニュースリリース・技術移転に関する企業情報を抽出し、特許権・技術移転の状況に着目したデータ解析を実施した。この結果、開発初期段階を担った組織を分類すると、(a)アカデミア(大学・研究機関)3剤、(b)バイオテック企業18剤(c)製薬企業20剤、と分類することができた。既文献で報告されるように、アカデミア技術をもとに設立されたバイオテック企業が大企業への仲介を果たしている状況が観測されたため、データ抽出方法の妥当性がある程度支持されていると考える。また、この結果から、アカデミアが直接物質を創生する開発早期段階まで介入することは困難であると考えられる。このことを考慮して、更に抗がん剤ごとに存在する特許権の種類を抽出し、筆頭IPC分類により各医薬品に含まれうるIPCカテゴリーの特許権を推定した。加えて、これらIPCの特性を踏まえ、アカデミアにて取得可能性が高い特許権のIPCについて考察を加え、第11回日本知財学会にて発表を行った。 ②企業・特許事務所・アカデミア産学連携担当者等の有識者ヒアリングを実施し、特許事務所用アンケート実施のための作業仮説を立てた。これを踏まえて、特許事務所用アンケートの草案作成、および対象者のリストを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では次年度に予定していた日本知財学会での成果発表まで進展した。 具体的には、研究対象とする上市抗がん剤について種々のデータを取得した。これらの技術移転情報をもとにデータ解析を行ったところ、アカデミアの創薬貢献度を分析した既存文献と傾向が類似する結果が得られた(方法論は異なる)。従って、このデータセットを用いて解析を進めていくことに対して、ある程度の妥当性が得られたと考えている。また、数件についてケーススタディとして技術移転の前後の特許権・共同研究の経緯を確認し、分析のフレームワークを確立した。更に、これらの抗がん剤について、技術移転前後の組織の関連特許権を抽出し、解析した。先のケーススタディと併せ、アカデミアで取得可能性の高く、かつ技術移転の対象となりうる特許権の種類(IPC分類による)の推測を行い、第11回日本知財学会にて発表を行った。 一方で、研究者向け特許情報ツール作成に関しては、上述の研究でアカデミアの創薬特許権がそのまま技術移転されているわけではない実態が明らかとなったため、上市薬に含まれる企業特許権相当のアカデミア特許権構築を目指すのではなく、アカデミアの実態に応じた技術移転につながる特許権の構築が望ましいと考えた。この為、抽出済の企業特許権をまとめるのではなく、上市薬から想定される特許権の種類に着目し、更に後述の特許事務所アンケートを踏まえて、現実的なアカデミア特許権モデルの構築を行う。 また、講演での発表や、企業・特許事務所・産学連携担当者等の関係者との勉強会にて、産学連携に関する現実の問題点についての情報交換を行い、これらと上述の結果を踏まえた上での特許事務所用アンケートと対象リストを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、上市薬だけでなく開発中の抗がん剤の特許情報も視野に入れていたが、上市薬41剤にて十分量のデータ、および予測された傾向が確認されたことから、追加データとして上市までの成功確度が不明確であり10倍量に相当する435剤までを解析対象とすることは、研究目的と照らして妥当ではないと考えられたため、上市薬を所有する組織に焦点を当てて深堀した解析を進めていく。 当初企業が作成する特許明細書に近いレベルでのアカデミア明細書作成のための情報ツール作成を想定していたが、アカデミア発創薬の技術移転に関するケーススタディや、特許種類の解析を通し、アカデミアの特性に応じた特許権の構築が現実的かつ好ましいと考えられたため、上市薬の技術移転成功例から見る特許権の構築方法へとシフトしている。すなわち、アカデミアにおいて実施例を完全に網羅する生産研究のような開発型研究への過度な推奨は、基礎研究力の低下や研究者のキャリア上の問題も招来する為、産学連携において、一方に過度な要求を強いるのではなく、産と学のそれぞれの役割を明確とするラインを、成功事例の特許権解析から導き出す。 これらを踏まえた特許事務所用アンケート、および対象リストを作成した為、本年度中にアンケートを実施し、得られた結果より仮設の再検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
参加予定していた学会等がほぼ都内にて集中開催された、知財学会で本研究とは別の研究発表があり弁理士会より参加費・旅費が支弁された、研究費交付前であり自費参加した、弁理士会当初予定していたが業務の関係で参加できなかった学会があった、等の理由により旅費に未達が生じている。 次年度既に開催場所が確定している学会等は、東京都から離れた地点であり、次年度は当初予定よりも支出の増加が見込まれるため、繰越金を当てる。
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Research Products
(1 results)