2013 Fiscal Year Research-status Report
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25871084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Toyo Institute of Food Technology |
Principal Investigator |
井土 良一 公益財団法人東洋食品研究所, その他部局等, 研究員 (20442585)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 柿果皮 / 干し柿 / 脂肪蓄積 / 脂肪細胞 / 3T3-L1 / トリテルペノイド / ポモル酸 |
Research Abstract |
柿果実は栄養素が豊富に含まれ、食べることによって健康維持効果が期待できるが、摂取における効能はあまり解明されていない。また、柿果皮は干し柿加工時に大量に廃棄されているが、体に良い影響を与える成分(カロテノイド、ポリフェノールなど)が果肉以上に豊富に含まれており、機能性食品素材としての利用が期待できる。これまでに、渋柿である‘平核無’の果皮アセトン抽出画分に、3T3-L1由来脂肪細胞に対して脂肪蓄積の抑制作用があることを見出している。 本年度は、脂肪蓄積抑制作用に関わる成分の同定を行った。アセトン抽出画分をカラムクロマトグラフィーによって分画し、脂肪細胞におけるグリセロール-3-リン酸脱水素酵素(GPDH)活性の抑制を指標にして調べた結果、関与成分はトリテルペノイド類(ウルソール酸、オレアノール酸、ポモル酸)であると同定した。中でもポモル酸に最も強いGPDH活性抑制作用があった。同定したトリテルペノイドはいずれも既知で、ウルソール酸にGPDH活性抑制作用があることも報告されていた。しかし今回、ポモル酸にウルソール酸よりも強い作用があった点は新しい発見であった。 次に、遺伝子発現(39000以上の転写産物)の変化を調べることで、ポモル酸の脂肪蓄積抑制作用の機構を推定した。ポモル酸によって脂肪細胞では糖代謝関連遺伝子の発現増加と脂質代謝関連遺伝子の発現減少が見られた。また、コレステロール生合成関連遺伝子の発現も増加していた。脂肪蓄積抑制の作用機構はインスリンシグナルを介さず、コレステロール代謝を介しているという非常に興味深い仮説が導き出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の第一目標であった脂肪蓄積抑制成分の同定は達成したが、動物実験が開始に至らなかったため、やや遅れていると判断した。最も作用が強いポモル酸には市販標準物質が無く、またカキ果皮の含量が少ないため、構造解析に必要な量の精製、2次元NMRスペクトルの測定・解析に想定より多くの時間を要した。さらに、関与成分の作用機構解明に遺伝子発現の違いを網羅的に解析するDNAマイクロアレイ解析法を利用する際、成分処理区と未処理区間で細胞一つあたりのmRNAの発現量に違いがあるかの確認、および遺伝子発現の違いが現れやすい培養条件の検討に予定以上の時間が必要となった。これらが遅れの原因と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【実験動物への投与試験】遺伝子発現解析の結果から脂肪蓄積抑制作用を持つポモル酸は、コレステロールの代謝に関与している可能性が示された。脂肪およびコレステロール量を調節した飼料にカキ果皮から精製したポモル酸を添加し、ラットへの投与効果を調査する。 当初は高脂肪食投与によって肥満を誘導した時の抗肥満効果を調査する予定であったが、遺伝子発現解析より、脂肪合成の抑制はコレステロール代謝に関わると考え、高脂肪かつ高コレステロール食投与したラットへのポモル酸投与効果を検証することにした。これにより、ポモル酸の肥満および脂肪肝への影響とそれを原因とする疾病などの予防効果について調査を行う。 【柿果皮の食品利用法の検討】カキ果皮はそのままでは固いため、食品への適合性が限定される。果皮を加工しやすい、食品への適合性が高い状態に変換することが重要であると考えられる。そこで、セルロース、ペクチンなどの分解酵素で処理し、果皮の形状をある程度壊す方法を検討する。その後に、微生物発酵によってさらなる状態および有効成分変化を起こして利便性と活性向上が可能かを検討する。
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Research Products
(1 results)