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2013 Fiscal Year Research-status Report

池大雅作品にみる室町文化憧憬の探究:水墨表現を中心に

Research Project

Project/Area Number 25871215
Research Category

Grant-in-Aid for Young Scientists (B)

Research InstitutionAoyama Gakuin University

Principal Investigator

出光 佐千子  青山学院大学, 文学部, 准教授 (90462902)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2015-03-31
Keywords池大雅 / 室町水墨画 / 室町文化 / 指頭画 / 植松家 / 徳源寺 / 南画 / 文人画
Research Abstract

平成25年度は、池大雅による室町水墨画学習の様相を明らかにするために、「倣」や「擬」と落款に記されている大雅作品を中心に調査を行うとともに、作品の本歌と推察される室町水墨画との比較検討を行った。また、大雅に書画を発注した素封家所蔵の大雅作品や資料の調査を通じて、データベースを構築することに努めた。その結果、以下の3点の成果が得られた。
1.落款に「倣」や「擬」と明記された作品のうち、その多くは本歌となった作品が推察できた。一方で、「擬光悦」落款のある「嵐峽乏査図屏風」については、本歌となった光悦の絵画は判明しなかったが、今回、画面を詳細に観察することにより、松の葉が風に吹かれて川の描線へと変化してゆく様子など、光悦の流麗な書風を絵にイメージしたものではないかという考察に至った。
2.落款に明記されていないが室町水墨画を意識した作品として、伝雪舟筆「富士三保清見寺図」を踏まえた「夏山霊峰図屏風」や「倣雪村山水図屏風」の他に、赤脚子や周文筆「寒山拾得図」を踏まえた「指墨寒山拾得図」、周文筆「陶淵明賞菊図」を踏まえた「淵明愛菊図」などが見出された。いずれも、当時、既に人口に膾炙した古典的な作品の構図を借りて、米法山水などの中国絵画様式あるいは、中国文人たちが親しんだ指墨で表すといった手法が見られた。
3.沼津市・原宿の植松家と、植松家の菩提寺である徳源寺に伝わる作品を悉皆調査した結果、植松家六代当主蘭渓が発注した大雅作品、円山応挙の画稿、岸派数点の他、江戸時代後期から植松家を訪問した画家、書家、歌人などの画帖と、画帖に仕立てていない状態の書画が大量に発見された。大雅作品を享受した素封家の文人趣味が詳細になる糸口が見つかった。
以上、江戸の文人趣味の基層をなした室町文化と江戸の文人趣味の実態を具体的な作品から示すことができた。この成果は次年度以降、逐次発表してゆく予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成25年度4月~6月の実施予定であった徳源寺所蔵作品の調査に関しては、年間を通じて計三回実施し、データの資料整理ができた。しかし、全体量のまだ三分の一ほどしか終わっておらず、次年度も継続して調査を行う予定である。
7月~12月に実施予定であった落款に「擬」「倣」「模」などが明記されている作品調査に関しては、アメリカ・ボストン美術館所蔵品(「嵐峽乏査図屏風」八曲屏風)以外の、以下の国内作品についてほぼ実施できた。「嵐峽乏査図襖(現・屏風)」(東京・個人蔵)、「柳下童子図屏風」(京都文化博物館蔵)、「倣雪村山水図屏風」(京都国立博物館蔵)、「京都名勝六景図」(個人分蔵)、「日本十二景図」(東京・個人蔵)
しかし、大雅が模倣した室町水墨画が当時の社会でどのように認識され、流行していたかに関して、版画・古典籍資料の調査はまだ不十分であり、この調査はひきつづき次年度に期待される。また、平成25年度は、研究者が新しい職場環境に置かれたこと、平成27年2月に予定されている近代文人画家・小杉放菴没後50年展(於出光美術館)の展覧会企画準備に集中する必要があったため、調査研究の成果発表が行えなかった。この点を深く反省して、次年度に逐次、研究報告・発表をしてゆく予定である。

Strategy for Future Research Activity

前年度の成果である江戸人が憧憬した室町文化を、さらに水墨画技法の面と画賛の鑑賞スタイルの面から考察する予定である。
○4月~7月〈大雅の指頭画と水墨画の伝統技法の関係を調査〉大雅の父が銀座下役人だったという逸話から、大雅が中村内蔵助を通じて光琳に傾倒した可能性が吉沢忠氏によって指摘されてきたが、具体的に作品から実証されていない。そこで、大雅が用いた「指頭画」技法の中で、指だけでなく掌を使って墨面を表した表現などが、琳派に継承された「たらしこみ」や水墨画の伝統である「没骨」技法とどのように異なるのかについて、以下の大雅作品と琳派や水墨画との比較研究によって明らかにする。対象作品:①「指墨梅花黄鳥図」(国内個人蔵)②「指墨怪鬼弾琴図」(国内個人蔵)③「指墨蕙石図」(京都文化博物館蔵)④「「指墨寒山拾得図」(京都国立博物館蔵)⑤「慧遠庵居図・陶淵明陸修静図屏風」(国内個人蔵)⑥「年中行事図屏風」(国内個人蔵)
○8月~12月〈大雅作品と室町時代の詩画軸との比較研究〉江戸文人サークルの詩画の鑑賞スタイルに、室町文化がどのように反映されているのかを以下の調査・鑑賞により具体的に考察する。対象作品:①「箕山瀑布図」(国内個人蔵)②「陸奥奇勝図巻」(九州国立博物館蔵)③「浅間山真景図」(国内個人蔵)④「竹巌新齋図屏風」(国内個人蔵)⑤「雲林晴暁図」(国内個人蔵)⑥「米法夏山図」(国内個人蔵)⑦「清夜竹篁図屏風」(アメリカ個人蔵)
○1月~3月〈研究報告書の執筆〉2年間の成果として、池大雅による水墨画憧憬のテーマ研究を、「池大雅による室町文化憧憬―江戸の文人趣味の基層を探る」(仮)などの論文として報告する。
また、前年度から残された植松家と徳源寺が所蔵する作品の悉皆調査を逐次すすめると同時に、大雅が倣った室町水墨画の社会的受容の様相を版画・古典籍資料の調査から具体的に明らかにしてゆく予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度への繰り越しとなった約23万円は、3月にA3高画質フィルムスキャナーを購入する予定で取り置いていた資金であったが、想定外の出張により額がわずかに足りなくなったため、購入を次年度にすることととした。
平成26年4月初旬にA3高画質フィルムスキャナー(28万7340円)を購入した。

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Published: 2015-05-28  

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