2013 Fiscal Year Research-status Report
近代美術工芸における「図案」と「図案家」をめぐる基礎的研究
Project/Area Number |
25871230
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The National Museum of Modern Art,Kyoto |
Principal Investigator |
中尾 優衣 独立行政法人国立美術館京都国立近代美術館, 学芸課, 研究員 (00443466)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 工芸 / 図案 / 近代 / デザイン / 産業 / 美術 / 染織 / 漆 |
Research Abstract |
本研究は、近代の図案と図案家に関する文献資料からテキストや図版などの基本事項を収集・整理し、特に京都を中心とした関西圏を主たる対象に、図案研究の基盤作りを目指している。当該年度は研究の初年度に当たるので、当初の計画通り、目標とするデータベース作成のための基本資料の選定、および各資料に関する情報の精査に努め、今後の文献調査に具体的な見通しを立てた。 年度計画の1と2にあたる、図案家に関する基本事項および言説のテキスト収集については、明治から昭和にかけて発行された図案、デザイン、工芸関係の雑誌・新聞から関連事項を抽出してデータ化を行い、年代、地域、発言者の立場等のタグを付して分類作業を始めている。図案に関連する図版のデータ収集については、同資料に掲載されている図案や作品図版を可能な限りデジタルカメラで撮影し、あるいは複写を行い、作者、年代、地域、図案や作品のモチーフ等によって分類作業を行い、データの蓄積を進めている。 特に京都や大阪で発行された工芸や図案に関連する雑誌・新聞等の資料調査については、同時並行で開始した聞き取り調査の成果もあり、公立の図書館等に限らず、関西圏で染職や漆工に古くから関わっている関係各所に代々保管されている資料調査を実施することができた。そして、当該年度の計画で調査対象としていた『京都図案』などの文献資料に加えて、さらに稀少性の高い文献資料や原資料を複数調査する機会に恵まれたことは大きな成果であった。これは、予定していたような文献資料から直接テキストを収集する作業よりも、はるかに膨大で手探りに近い作業を要するが、当時の工芸や図案を取り巻く状況をより深く知るための大きな手掛かりとなるのは明らかであり、今後も調査対象の拡充には柔軟に対応しつつ、予定した調査を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査については予定以上の成果を上げることができたが、その分、対象とする資料が大幅に増えたことと、個人情報を伴う資料を取り扱うため、データベースの入力に関わる人数を限る必要が出てきた。そのため、データベース作成の進捗に少し遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画そのものについては何ら変更の必要性はないが、調査対象を全国的に発行されていた雑誌・新聞に広げていくよりも、研究者の調査環境を鑑み、京都あるいは関西圏という地域性を重視して調査を深めることで、より研究成果を上げることができると考える。具体的には、聞き取り調査が文献調査そのものに非常に効果的であることがわかったので、聞き取り調査を計画より早め、来年度に重点的に実施する予定である。一方、データベース作成については、研究終了年度まで、できる限り長期間にわたって作業に関わることのできる協力者を早急に探す必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画段階で購入の見込みであった高額の文献資料の一部について、採択後に購入不可となったため、次年度使用額が生じた。 当初計画よりも調査対象とする原資料が増えたため、その撮影・複写およびデジタル化の費用として充当する予定である。
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