2013 Fiscal Year Annual Research Report
発話の動的インタラクションを考慮した質問音調の生起要因解明とモデル化
Project/Area Number |
25884099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
波多野 博顕 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 知能ロボティクス研究所, 研究員 (10709364)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 質問イントネーション / 話しことば音声 / 自然対話 / 対人関係 / 末尾音調 |
Research Abstract |
本年度は語用論的要因のうち対人関係に焦点をあてて質問音調との関係を検討した.具体的検討内容は以下の4点である. (1) 対話における話者同士の対人関係のラベリング (2) 形態素解析ソフトによる質問発話末の品詞・形態素の分類 (3) 質問発話末の音調カテゴリー分類におけるパラメータ修正 (4) 情報要求度に基づく質問タイプのグループ化 本年度の研究実施計画のうち,(1)は語用論ラベルのラベリング,(2)(3)は音響・テキスト処理の自動化,の目的に沿うものである.(4)は,これまでの予備的分析結果を踏まえた上で,新たに対象を整理する目的で行った.上下関係は,社会通念上想起される立場の上下に基づいて,話し手が相手よりも上,対等,下である場合の3つに分類した.親疎関係は,相手と初対面か否かに基づいて2つに分類した.最終的なラベルは複数のラベラ-の一致度に基づいて決定した.形態素解析ソフトはMeCabを用い,書き起こしテキストを対象に言語形式の整理を行った.質問発話末音調のカテゴリー分類(上昇・下降等)では,先行研究によるパラメータ(F0, 持続時間)を踏まえた上で新たに知覚実験を行い,より人の知覚と対応するよう値の修正を行った.情報要求度に基づいた質問タイプのグループ化でも先行研究を参考に,Yes-No質問等を要求度が高い質問,同意要求等を要求度が低い質問とした.いずれも音響分析や日本語教育の専門家から助言を得つつ分析を行った.検討の結果,話し手の立場が相手より上の場合には対等時と比較して情報要求度の高い質問の終助詞「の(ん)」「か」内でF0上昇量が増加すること,相手よりも話し手の立場が下の場合には対等時と比較して情報要求度の低い質問の終助詞「よね」「ね」で持続時間が延伸すること等が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問発話の音調に影響を与える語用論的要因のうち,対面インタラクションの重要な要素である対人関係の差異がどのような形で音調動態に現れるのかについて,実例に基づいて明らかにすることができた.形態素情報や音調カテゴリーの分類についても,多量のデータを客観的に研究者個人で分析処理する環境を整えることができた.最終目標であるモデル化へ向けて研究は着実に前進しているため,現在までの達成度を(2)と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は言語形式を手がかりにインタラクションにおける心的態度・話題展開の分類をおこない,これらと質問音調との関連について分析を進める.そして,前年度の成果と合わせ,本研究の目的である,質問音調に影響を与える語用論的要因のリスト作成,および,音調の生起を総合的に記述することのできるモデルの構築,を達成する.そのために引き続き音響分析や言語研究の専門家とも活発なコミュニケーションを図り,ラベリングでは研究協力者の支援を求める.
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Research Products
(2 results)