2013 Fiscal Year Annual Research Report
テンソル分解法を用いた高精度第一原理計算手法の開発
Project/Area Number |
25887017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠松 秀輔 東京大学, 物性研究所, 助教 (60639160)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / テンソル分解 / 配置間相互作用法 |
Research Abstract |
今年度は主に、対称テンソル分解配置間相互作用(STD-CI)法のプログラムの整備、及び、高速化を行った。STD-CI法で分子などのエネルギーを求める際は、エネルギー関数を変分原理に則って最適化するが、その変分アルゴリズムについて検討を行い、ある程度安定的に解を求めることができるようになった。また、変分にはエネルギーの微分を要するが、この微分の精度を維持するために多倍長精度の実数が必要になることが分かった。 さらに、OpenMPによる並列化を進め、計算時間を6倍程度短縮することができた。 以上のようにして整備を進めてきたプログラムを、高精度量子科学計算のベンチマークとして従来から用いられてきている、BeをH2に挿入する経路上のエネルギー計算に応用し、STD-CI法の性能を調べた。テンソル分解の階数を2としたとき、もっとも精密な方法である完全CI法とくらべて約 10 mHartree 異なるエネルギーを得た。これは、同じ挿入経路上で最大で 100 mHartree の誤差を生じるハートリー・フォック法にくらべると大きな改善であるが、CAS-CCSD法などでは 1 mHartree 程度の誤差であり、さらなる改善が望まれる。テンソル分解の階数を増やすことでより精度が上がると考えられるが、現状のプログラムでは安定に解を求めることができていない。また、STD-CI法では、特に遷移状態の構造において、エネルギーを完全CI法にくらべて過小評価することがあり、これは変分原理に反する。その理由として、スピンの対称性を考慮していないことが考えられる。スピン対称性の考慮は収束性の改善にも役立つと考えられるため、来年度の重要課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プログラムの整備は進んできており、当初想定したとおり、一般的な分子に適用し、方法論そのものの評価を進めることができている。また、これによって新たな課題もあきらかになっており、ある部分では予想以上に研究が進展していると言える。一方、当初予定した原子間力の計算については十分には進んでおらず、今後取り組んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で述べたとおり、スピン対称性を考慮したSTD-CI法を検討する。これによってエネルギーの精度向上と同時に、収束性の改善も行う。これに加えて、当初の計画どおり、1)原子間力の計算手法の確立、2)励起状態の計算手法の開発、3)より大規模な系へのSTD-CI法の適用を目指して、アルゴリズムの検討とプログラムの整備、高並列化を進める。並列化については、MPI並列や、アクセラレータの併用も検討する。
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Research Products
(1 results)