2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25887026
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
横山 啓太 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (10534430)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 逆数学 / 2階算術 / 証明論 / 計算可能性理論 / 数学基礎論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、数学の諸定理を分類する逆数学研究の手法と視点をより拡張することを目指している。平成25年度は主に逆数学をより証明論的な立場から拡張することを念頭に研究を行った。特に、逆数学の枠組みで帰納法の強さを評価する新たな手法の確立に力を注いだ。 まず得られたのが、shortening cutと呼ばれる算術のモデル理論の手法の逆数学への応用である。この手法にその他の手法を組み合わせることで、シグマ1帰納法を成り立たせないような算術のモデルの内側に自分自身とは同型にならないより複雑な内部モデルを擬似的に構成できることを示した。これを応用して、自然数の構造の自然な二階公理化から得られる範疇性は必ずシグマ1帰納法を導くことを示し、 J. Vaananen により提示されていた自然数の二階範疇性の強さの問題をより一般的な形で解決した。 また、ラムゼイの定理型の組み合わせ命題の証明論的強さをより詳しく評価するため、有限ラムゼイ定理の様々なバリエーションを考案し、それらを導くような自然な無限組み合わせ命題が何であるかを探った。特に、ラムゼイの定理を変形して多重化させ、単独の適用とどのように強さが変化するかに着目した。結果として得られた無限組み合わせ命題は、計算可能性の立場からはラムゼイの定理をわずかに強めた自然な拡張で多重化によって強さが変化せず、一方証明論的な視点からは繰り返す毎に強さが増す、という性質を有することが分かった。 また、逆数学と計算可能性理論の国際会議 Computability Theory and Foundations of Mathematics のプログラム委員を務め、プログラムの編成等に貢献した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度、当初に予定していた帰納法公理を証明論的な手法でとらえる研究はあまり成果が上がらなかったが、これをモデル論的な手法に切り替えたところ、概要でも述べた内部モデルの存在と帰納法の否定命題が同値になるという結果を得、さらにそこから逆数学研究への応用を得ることが出来た。この手法は今後更なる発展が期待でき、逆数学への応用だけでなく、算術のモデル理論そのものの新たな結果が得られることも期待できる。 また、ラムゼイの定理型の組み合わせ命題の証明論的強さの評価では、かなり順調な進展が得られた。今回結果として得られたラムゼイの定理の多重適用に対応した無限組み合わせ命題は、計算可能性の立場では多重化で強さが変化せず、一方証明論的な視点からは多重化させる毎に強さが増す、という性質を有する。これは、組み合わせ命題において証明論的な強さと計算可能性の立場からの強さが乖離する典型的な例で有り、逆数学の証明論的な立場からの拡張には組み合わせ命題の強さの精密な研究が必要であると確信するに至った。ここで鍵として用いた手法の一つが、多重化された有限ラムゼイの定理と証明論的強さの比較であり、多重化された有限ラムゼイの定理自身がペアノ算術に代表される諸種の公理系の無矛盾性と深い関わりを持つため、無矛盾性に関する命題とラムゼイの定理の関係についても新たな知見を得ることが出来た。 また、逆数学と計算可能性理論の国際会議運営を務める中でシンガポールや米国の逆数学・計算可能性理論の研究者と連携のパイプを構築することが出来、その中からいくつかの新たな共同研究のための萌芽を得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は特にラムゼイの定理の証明論的強さの確定という、逆数学分野における長年の課題を解決すべくそのための新たな手法の確立に取り組む。特に関連する研究としては、直近においてChong/Slaman/Yangによりラムゼイの定理と帰納法の関係についての画期的な成果が示されている。その中では、BMEと呼ばれる特殊な組み合わせ命題が鍵として用いられており、その強さを検証することが不可欠であると考えている。 また、計算可能性の視点、証明論の視点に並ぶ3つめの尺度である論理公理の強さによる視点からも、最近Berardi/Steilaによりラムゼイの定理と排中律の関係が示されており、本研究とこの研究を融合させていくことも重要な課題と考えている。 さらに、東北大学の村上氏、山崎氏との共同で計算機科学で良く用いられるラムゼイの定理の弱いバリエーションの強さを調べる研究も進めている。現状ではまだ重要な進展は得られていないが、これまでに深く研究されているラムゼイの定理とは振る舞いが大きく異なることが分かってきている。また、この弱いラムゼイの定理の逆数学研究から計算機科学そのものへの応用を得ることも目指していく。 これに加え、国際会議の開催の枠組みから立ち上げられつつあるシンガポールのグループとの連携体制をさらに発展させる交流計画に深く携わっていく予定で有り、特にシンガポールの研究者との共同研究の立ち上げによってこの計画に貢献し、自身の研究に還元させていきたいと考えている。
|
Research Products
(6 results)