2013 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性腎症のポドサイト障害マーカーの樹立と治療標的分子の探索
Project/Area Number |
25893155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
櫻井 明子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (70707900)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎症 / ポドサイト / CXCR4 / BMP4 / バイオマーカー |
Research Abstract |
慢性腎臓病(CKD)は我が国のみならず全世界において最も重要な病態である。この主たる原因は糖尿病性腎症であり、年々増加し、我が国では末期腎不全の45%を占める。また、CKDは心血管病変(CVD)の重大な危険因子であり、さらに血管合併症は糖尿病性腎症では高頻度におこる合併症であり、予後は極めて不良である。ところが診断の面では、アルブミン尿は腎症以外のほとんどのCKDで認められるという問題があり、治療の面でも、現行の治療では腎不全や透析になるのを少し遅らせるだけであり、進行する腎症を画期的に治癒させる治療法はない。本研究ではタンパク尿の出現や腎機能低下の直接の原因となる糸球体上皮細胞(ポドサイト)に着目し、新規標的分子CXCR4の腎症での分子病態解析を基に、新たな診断のためのバイオマーカーの樹立と新規分子標的治療の探索を行う。 本研究の目的である、糖尿病性腎症の診療上の問題点を解決すべく、(1) in vitroでの糸球体硬化におけるCXCR4の制御機構の解析、(2) 糖尿病性腎症モデルマウスを用いたBMP4-CXCR4シグナルの解析、(3) 糖尿病患者の尿・腎組織サンプルのバンク化と尿中CXCR4測定システムの構築、(4) conditional Tgマウスを用いたBMP4-CXCR4シグナルの解析、(5) 尿中CXCR4値測定による腎症予後と治療反応の評価・解析を行う。腎症患者の腎予後・生命予後に直結する、腎機能低下を伴うタイプのポドサイト障害の分子病態を解明し、診断面における問題点である、アルブミン尿は腎症以外のほとんどのCKDで認められるという点を、治療面におけるポドサイト障害へのダイレクトな治療が存在しない点を、それぞれ解決することをめざす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CXCR4はポドサイトにおいて、BMP4により強力に発現が誘導されることが予備実験で明らかになった。培養ポドサイトを用いて、糖尿病において活性化が確認されているTGFβ-ALK5-Smad3およびBMP4-ALK3/6-Smad1の両経路によるCXCR4発現誘導の機構を解析中である。培養ポドサイトにTGFβ、BMP4刺激を加え、p38MAPKやポドサイトの細胞骨格の機能維持に重要であるRac, cdc42の活性化、ポドサイトによる糸球体濾過機能の重要な機能分子であるnephrin, podocin, CD2AP, Tpbgなど発現調節や細胞内局在の変化、アクチンフィラメントの変化を染色により実施した。 糖尿病性腎症モデルマウスを用いて、各々のモデルにおいて、腎糸球体内におけるCXCR4およびBMP4/Smad1などのCXCR4制御分子の存在・発現を病期の早期から各段階で、単離糸球体でのmRNA発現、免疫組織学的解析によるタンパク質発現を詳細に解析中である。糖尿病におけるポドサイト障害発症・進展の関係を、尿中アルブミンの測定により明白にするため、尿中CXCR4測定のための尿サンプルを収集している。 糖尿病患者の尿・腎組織サンプルのバンク化と尿中CXCR4測定システムの構築のために、倫理委員会で承認せれ、同意書の得られた腎生検実施患者の尿・腎組織の収集を行った。アルブミン尿、腎機能、腎臓のエコー所見、生活習慣、メタボリックシンドロームなどの危険因子、心血管病などの合併症の有無、使用薬剤などの臨床データも集積中である。
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Strategy for Future Research Activity |
コンディショナルTgマウスを用いたBMP4-CXCR4シグナルの解析を行う。conditional BMP4-transgenic miceは、タモキシフェン誘導により、正常発生には影響を与えず、成体になって腎にBMP4を強発現させるマウスで、BMP4が糖尿病性腎症の病変形成における糸球体構成細胞であるメサンギウム細胞とポドサイトの両細胞への影響が混在する。ポドサイトへのBMP4シグナルの影響を分離して解析するために、ポドサイト特異的プロモーターを有するPodocin-rtTA miceとTetO Cre miceとのダブルトランスジェニックによりポドサイト特異的にCreを誘導するマウスをすでに作製済みであり、これにBMP4-loxP miceまたはCAG-CAT-Bmp4 miceと掛け合わせることで、ポドサイトでのBMP4発現の増減を調整する。これらマウスにおいて、糖尿病性腎症モデルでのBMP4-CXCR4シグナルの検討で得られたCXCR4制御分子の存在・発現の変化を解析する。 尿中CXCR4値測定による腎症予後と治療反応の評価・解析を行う。採集しているバンク中の時系列ごとの尿中バイオマーカータンパク、腎組織を用いて、尿中CXCR4の測定値の経時的な変動を追跡し、従来の尿タンパク量、血清クレアチニン値、シスタチンC、GFRなどとの比較検討を行う。治療としては、現在用いられている、タンパク質制限食、各種RA系阻害薬、スタチンをはじめとする、さまざまな現行の治療に対する反応・不応例に関して、尿中CXCR4値が病勢を反映することを確認する。腎生検施行時に腎での細小血管の動脈硬化が明らかな症例においては、動脈硬化を認めない症例との比較により、心血管事故・死亡にリンクするマーカーを抽出できないかの検討も行う。各糖尿病性腎症モデルマウスの尿を用いて、腎予後ならびに生命予後に関しても尿中CXCR4測定の有用性を評価し、心腎連関へのBMP4-CXCR4シグナル伝達経路の関与を検討する。
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Research Products
(1 results)