2013 Fiscal Year Annual Research Report
完全連通構造を有する海綿骨形態の βTCP フォームの創製
Project/Area Number |
25893175
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二階堂 太郎 九州大学, 大学病院, その他 (80713429)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | リン酸三カルシウム / 骨補填材 / 生体材料 / 連通気孔 |
Research Abstract |
β型リン酸三カルシウム(βTCP)は骨伝導性と骨吸収性を併せ持つことが知られており、人工骨置換材として広く臨床応用されている。一方、海綿骨は細胞や組織の侵入に理想的な三次元連通気孔構造をしており、この孔構造に類似したβTCPフォームは理想的な骨置換材となる可能性が高い。海綿骨と類似した連通気孔構造を持つポリウレタンフォームを鋳型としたセラミックスフォーム法により、α型リン酸三カルシウム(αTCP)フォームやハイドロキシアパタイトフォームが調製されているが、βTCPフォームを得るには至っていない。その理由は、圧粉操作が不可能なセラミックスフォーム法では高温焼成が不可欠であるが、αβ転移温度(1180℃)以上ではβ相からα相への相転移が生じるためである。本研究ではβTCPフォームを得るために二つの方法を検討した。まずは、β相の安定化材としては酸化マグネシウム (MgO)を用いた。炭酸カルシウムおよび第二リン酸カルシウムに対しMgOを(Ca+Mg)/P比が1.5となるように添加し、スラリーを調製した。このスラリーにポリウレタンフォームを浸漬し、1500℃で熱処理を行い、Mg固溶TCPフォームを創製した。得られたフォームの粉末X線回折(XRD)の結果から3mol%以上のMgOを添加した試料はβTCPの単一相が得られることがわかった。 次に1500℃で焼成して得られたαTCPフォームをαβ転移温度以下で熱処理することによって、α相からβ相への相転移を促しβTCPフォームが得られるかどうかについて検討した。αTCPフォームをαβ移温度以下の温度で熱処理した。XRDの結果から、αTCPフォームを、800~1000℃の温度範囲で処理をすれば単相のβTCPフォームが得られることが明らかになった 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は初年度であり、βTCPフォームの調製することを目的とした。βTCPは低温安定相であり、αβ転移店が1180℃であることから1180℃以下で焼成する必要があるが、フォーム調製においては圧粉操作ができないため、1180℃以下では十分な強さのβTCPフォームが調製できなかった。そこで、MgOの添加によるβ相の安定化を検討し、15004℃の焼成温度で3mol%のMgOを添加することによりαTCPフォームと同程度の機械的強さを持ったMg固溶βTCPフォームが得られた。もうひとつの方法として、αTCPフォームをαβ相転移以下で熱処理することによりβTCPフォームの調製を試みた。αTCPフォームを1000℃で300時間熱処理することによりβTCPフォームが得られることがわかった。以上のように本年度はβTCPフォームの創製とその物性評価を目的としていたため、おおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Mg添加で調製したβTCPフォームおよび熱処理で調製したβTCPフォームの骨芽細胞様細胞による解析・・・近交系ラットの大腿骨から調製した骨髄細胞懸濁液を骨芽細胞様細胞に分化させた後、細胞培養液に浸漬したβTCPフォーム表面に播種し、骨芽細胞様細胞のβTCPフォーム内部への導入率を検討する。また、細胞のβTCPフォーム表面および内部への初期接着形態を走査型電子顕微鏡にて観察し、初期接着数を計測する。また、培地中で一定期間培養し、経時的に細胞増殖数、細胞形態および分布を計測する。さらに、細胞の分化の指標マーカーとしてアルカリフォスフォターゼ活性、オステオカルシン産出量を測定し、細胞レベルにおけるβTCPフォームの骨伝導性についての評価を行う。 2.Mg添加で調製したβTCPフォームの病理組織学的探索(家兎)・・・17週齢の家兎大腿骨に直径7mmの骨欠損を形成し、骨欠損部をMg添加で調製したβTCPフォームで再建する。対照はHApフォームおよびαTCPフォームとする。移植後4,8,12週目に試料を周囲組織と一塊に摘出し、アルカリフォスフォターゼ活性、オステオカルシン産生をタンパクレベルにて評価するとともに、骨の形成をマイクロCTを用いて定量的に解析する。さらに、Mg添加で調製したβTCPフォームの組織親和性、骨伝導性および骨置換の詳細は病理組織学的に検討する。骨の形成速度はテトラサイクリン、キシレノールオレンジなどの骨ラベリング法により検討する。 3.熱処理で調製したβTCPフォームの病理組織学探索(家兎)・・・基本的には上述の Mg添加で調製したβTCPフォームの病理組織学的探索と同じ検討を熱処理で調製したβTCPフォームで行う。なお、対照もHApフォームおよびαTCPフォームであるため対照に関しては新たに実験を行わない。
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