2013 Fiscal Year Annual Research Report
サーモダイナミクスを用いた口腔乾燥症治療戦略イノベーション
Project/Area Number |
25893213
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
向井 知理 九州歯科大学, 歯学部, その他 (00713116)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | サーモダイナミクス / 唾液分泌 |
Research Abstract |
超高齢社会にある我が国において,口腔機能を維持あるいは改善することは国民健康に寄与するが,複雑な治療方法を開発したとしてもそれが全国民に流布されるまでには多大な時間を要するため,より簡便な方法により口腔環境を改善する方法が望まれる.整形外科領域ではサーモダイナミクス(温熱・冷却)を応用した治療が盛んに行われ,免疫学的な観点からはとくに加温によるポジティブな効果が着目されているにも関わらず,歯科領域においてはエビデンスが不十分で浸透しているとは言い難い.そこで本研究ではサーモダイナミクスによる交感神経と副交感神経の活動割合変化に着目し,口腔領域の機能的・器質的変化について,唾液,口腔粘膜,口腔周囲筋,歯および歯周組織を中心に解析し,治療応用の可能性にいて検討することを目的として研究を実施した.初年度は加温による生体反応の変化の一つとして唾液腺に着目し,温度変化に伴う分泌量の動態について把握することを試みた.灌流顎下腺を用いて22℃と37℃における分泌をさまざまな神経伝達物質で比較したところ,ムスカリン性刺激薬であるカルバコールは~2.5倍(37℃分泌量:22℃分泌量)であり,既報とほぼ一致していた.一方でαアドレナリン性刺激薬であるフェニレフリンでは加温により2倍程度分泌上昇し,βアドレナリン性刺激薬であるイソプロテレノールでは8倍程度であった.すなわち加温により一様に分泌上昇するのではなく,分泌を引き起こすレセプターごとに温度による反応性も大きく異なることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膨大な時間を要する顎下腺灌流実験のトレーニングを完了し,予備実験として既報とほぼ同様の結果を得ることができるまでに至り,サーモダイナミクスについて当該方法にて今まで試されていない分泌刺激薬についてもデータを蓄積することができたため上記のように評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度のデータだけでは誌面報告するにはサンプル数が足りず,まずは必要サンプル数を十分に確保する.さらに,さまざまな分泌刺激薬の組み合わせについてもサーモダイナミクスによる影響を評価する. 動物実験の結果を踏まえてヒトサンプルの実験に早期に移行する.唾液中のイオン濃度,タンパク量,糖濃度,などの基礎的データに加えて,唾液中のストレスタンパクであるクロモグラニンAについても,ヒトの加温により影響があるかどうか検証する.
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