Research Abstract |
本研究では, 日本語母語話者と中国語母語話者の接触会話で生じる話題転換に関する摩擦の原因を探るため, 初対面男女別二者間の母語会話を各言語24サンプルずつ収集し, 話題転換パターンの量的出現傾向と話題開始ストラテジーの量的使用傾向について調べ, 比較した。中国語母語会話の話題転換に関する研究は未開拓のテーマであり、本研究の最大の特徴は優れて新規性に富んでいることである。 話題転換パターンは, 新規話題導入発話の直前の部分における会話参加者の話題終了ストラテジーの使用の有無によって, 協働的転換, 一方的転換, 無表示転換, 突発的転換の4種類に分類し, 各パターンの出現回数を調べた。話題開始ストラテジーは, 認識の変化を表す表現, 談話標識, 接続詞, メタ言語的発話, 話題のフレームの提示, 話題の強調, 呼びかけの7つに分類し, 新規話題導入発話におけるそれぞれの使用回数について調べた。 分析の結果, 話題転換パターンについては, 日本語母語会話では男女ともに協働的転換の出現率が9割を超えたのに対し, 中国語母語会話における協働的転換の出現率は4割程度で, 日本語母語会話に比べてその他の転換パターンの出現率が高かった。 話題開始ストラテジーについては, 日本語母語会話では談話標識, 接続詞, ストラテジーの使用なしの順に割合が高かったのに対し, 中国語母語会話ではストラテジーの使用なしが最も多く, 男性間の会話では全話題転換の約半分で話題開始ストラテジーが使用されていなかった。 以上の結果から, 中国語母語会話では話題転換ストラテジーを使用する回数が日本語と比べて少ないため, 接触場面において日本語母語話者が違和感を感じることにつながっていると推察される。このことから, 中国語を母語とする日本語学習者に対して日本語の話題転換ストラテジーの指導を取り入れることは, コミュニケーション摩擦を少なくするために有効であると考えられる。
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