2013 Fiscal Year Annual Research Report
人体に安全な天然素材を接着剤に用いた出土土器の修理技術・材料に関する研究
Project/Area Number |
25904013
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Research Institution | (社)天野山文化遺産研究所 |
Principal Investigator |
木下 雅代 一般社団法人天野山文化遺産研究所, 研究部, 主席研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 膠 / 修復副材料 |
Research Abstract |
膠は温水で弛み溶解し乾燥すると固化するという変化を繰り返し行うことができる柔軟性に富んだ素材である。この膠を出土土器類の接着に応用することが当該研究の目的である。 研究は模造の土器や埴輪等を人工的に破損させ膠を用いて接着・組み上げを行い、修復施工を通じて技術仕様を構築し課題を探った。修復実験と接着強度試験により次のような成果が得られた。①濃度の低い膠液は扱い易いが土胎に浸み込み接着界面に歩留り悪く接着には適さない。また濃度が高すぎると扱い難く接合前にゲル化を始めるため作業性が悪い。修復実験の結果、膠は性質の違いにより作業性や接着強度が異なり、接着には牛皮和膠3(天野山文化遺産研究所製。粘度7.0±1.0、ゼリー強度140±20、油脂分量1.0~2.0%)の重量比40~45%膠液が適していることを確認した。②接着の前処理として接合面に膠液を塗布し乾燥させておく処置が有効である。③組み上げ作業中に接着箇所の微調整(歪みなどの修正)が必要な場合、従来のエポキシ樹脂系接着剤では一旦接着すると有機溶剤等を用いて解体せねばならなかったが、膠は接着箇所に温水を浸み込ませると徐々に弛み、乾燥すると再び固化するので解体することなく微調整が可能であった。解体と接着を繰り返すことによる本体へのダメージを軽減できることを確認した。④接着強度は(接着剤の比較として木材の引っ張りせん断試験を採用)膠よりエポキシ樹脂系接着剤が勝るが、その強さ故に本体を破断させてしまう危険性も高い。強度試験により膠でも十分な強度が得られることがわかった。 今回の研究により膠による出土土器類の接着が可能なことがわかった。膠は原料や製法により物性が異なるため、様々な膠の比較実験を行い、膠による出土土器類の接着技術の構築と、膠や土、繊維などの天然素材のみを用いた充填材料の試験が今後の課題であり、当該研究を継続する。
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