2013 Fiscal Year Annual Research Report
中等教育学校の教師に求められる資質についての質的研究
Project/Area Number |
25907019
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鮫島 京一 奈良女子大学, 附属中等教育学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 臨床教育学 / 語り / ききがき |
Research Abstract |
本研究の目的は、中等教育学校の教師に求められる資質についての研究である。6年一貫教育に携わる教師に求められる資質は、中学、高校、それぞれに求められる教師の資質を両方持ち合わせればよいのだろうか。思春期から青年期へと至る発達段階を全体に理解することが求められるのではないか。これが本研究の出発点である。 本研究では、田中孝彦が提唱する「当事者の生活史・実践史の聴きとりと記録の吟味」という臨床教育学の方法を援用した。その手順は以下のとおりである。まず、現在、社会人となった卒業生4名に、小学校時代から現在までの生活について、半構造化インタビューを実施した。次に、インタビュー記録を分析に耐えうる資料とするために「ききがき(トランススクリプト)」を作成した。最後に、この資料について、現在に至る人生の歩みにおいて中等教育学校時代の持つ意味についての「語り」に焦点を絞り、その「語り」の構造を分析することを通じて、私自身の教育的働きかけの「痕跡」を検討し、課題に迫っていった。煎じ詰めて言うならば、現時点で形成している「自己」に対して中等教育学校時代がどのような影響を与えているのかを描き出し、そこから中等教育学校の教師に求められる資質を導き出そうと試みたのである。 本研究を通じて中等教育学校の教師に求められる資質の一端を明らかにすることができた。その資質とは、無力感を抱え込みながらもなお、人間には、与えられた諸条件の中で、自分の持ち合わせている力を最大限に活用して、自分を変えていく力があることを信頼する力である。この力を土台に、生徒が突き付けてくる現実に向き合い続ける力(生徒を理解する力)と教育実践を構想する力が磨き上げられていく。また、この三つの力が結びついたとき、生徒のみならず教師の人間形成の契機や中身がつくりだされる可能性が高まる傾向にあるということである。
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Research Products
(2 results)