Research Abstract |
〈研究目的〉本研究では, 休日等を利用して特別支援教育に関する研修会に自発的に参加している若手教員が何を求めているのかを明らかにし, そのニーズに応じた研修を実施した後, 学校現場でどのように活用されていくのかについて検証を行い, 若手教員の専門性向上のための実践的な研修の在り方について検討を行った。 〈研究方法〉対象者は自主的研修会に参加した90名(男性38名, 女性52名)である。希望する研修内容を自由記述の回答で収集し, 得られた148の研修内容をKJ法(川喜田, 1967)により分類し, 18の研修内容に関する質問項目からなる質問紙を作成した。それぞれについて五件法により希望の程度について尋ね, 記入された5段階の評定値を得点化し, 因子分析(バリマックス法)を行い, 回転後の因子負荷量を算出した。また, 抽出された各因子の平均値を算出し, t検定により有意差の検定を行った。研修で学んだことをどのように学校現場で活用しているかについては, アンケート調査で自由記述によって収集した。 〈研究成果〉因子分析の結果, 教員の研修ニーズは大きく第1因子「時代の求める新しい教育的知識に関するもの(研修方法, ICT, 外部専門家, キャリア教育, 障害特性の理解, インクルーシブ教育等)」第2因子「指導立案の方法に関するもの(実態把握, 指導計画, 教育法規等)」第3因子「個に応じるための具体的実践例に関するもの(教材教具, 事例検討, 保護者連携等)」の3つから構成されていた。これらはいずれも平均値が4.0より高く, 研修ニーズも高いと考えられた。t検定の結果, 第1因子よりも第3因子が有意に高く(t=2.13, p>.01), 他の因子間には差はなかった。研修で学んだことをいかに学校現場で活用しているかについては, 担任している児童生徒への「実態把握」「指導計画の作成」「自立活動の指導」「教材教具」「自校での研修会」等の記述が多く挙げられた。ニーズ調査から, 担任する児童生徒に応じるための研修が求められていること, さらに必要度の高かった研修の上位3つは, 授業実践に関するものであったといことがわかった。これらは, 研修で学んだことを実際に学校現場で活用している内容とも重なっていた。今回, 研修会参加者で5,6名に分かれてグループ協議を行った。グループ協議を用いた研修に関して尋ねた結果, 参加者同士で情報交換することが第3因子の研修内容をさらに深めたとの理由で, 93.2%の参加者がこの研修方法を支持した。今後, 教員の専門性向上のため, 事例的・実践的な内容の研修についてより効果的な研修方法を検討する必要がある。
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