2013 Fiscal Year Annual Research Report
トランス二置換型フタロシアニン誘導体の効率的合成法の開発
Project/Area Number |
25915016
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉田 健吾 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, テクニカルスタッフⅠ
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ニッケル錯体 / フタロニトリル / 機能性色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「トランス二置換型フタロシアニン誘導体」の効率的合成法の創製を目指して行った。 フタロシアニン(Pc)は人工の機能性色素であり、染料や顔料としての利用のみならず、近年では有機半導体材料としての応用も期待されている。筆者は計算化学により二種類のフタロニトリルを対面に配置したPc(トランス二置換型Pc)が、有機薄膜太陽電池において既存のPcを凌ぐ機能性を有することを見いだした。しかしながら、二種類の原料を用いた既存のPcの合成法では、反応の制御が困難であり六種類のPcの混合物を与えるという問題点があった。そこで筆者は2004年に報告されたフタロニトリル・オキシム・ニッケル塩から形成される錯体に注目した。ニッケルを挟みフタロニトリルが対面にあるこの錯体は、二等量のフタロニトリルと加熱することによりPcを形成することから、トランス二置換型Pcの中間体として機能すると考えた。 本研究では、まず報告されているニッケル錯体を鍵中間体とし、これと錯体のものとは異なる置換基を持つフタロニトリル誘導体を用いてトランス二置換型Pc合成を試みた。溶媒・時間を検討し、ジクロロメタン/メタノール混合溶媒中、室温で1日撹拌したところ、低収率ながらPcを得た。MALDI-TOF/MS解析より、目的の二置換型Pcの質量ピークを観測し、吸収スペクトルからもトランス二置換型Pcの生成が示唆された。しかしながら、収量が少ないこと、合成したPcの溶解性が低かったことにより単離には至らなかった。他の置換基を持つニトリル誘導体を用いた検討や、反応温度の検討など種々行ったが、立体的、電子的な要因から目的のPcの選択性の向上は見られなかった。しかしながら、従来法と比べるとトランス二置換型Pcの選択性は向上しており、本研究の金属錯体を鍵中間体とする手法が新たな低対称型Pc合成法となる可能性を見いだした。
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