2013 Fiscal Year Annual Research Report
陸棲脊椎動物における走行適応の多様性と進化について-トカゲ類の形態比較研究
Project/Area Number |
25916005
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Research Institution | 福井県立恐竜博物館 |
Principal Investigator |
久保 泰 福井県立恐竜博物館, 研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トカゲ類 / 走行適応 / 前肢の短縮 |
Research Abstract |
申請者は三畳紀の主竜類(ワニと鳥類の共通の祖先およびその子孫を含む分類群)では、二足歩行が進む(前肢が相対的に短くなる)ほど、走行性が高くなる(中足骨が相対的に長くなる)ことを見出した(Kubo and Kubo 2012 : Paleobiology)。この傾向は哺乳類とは全く異なるが、申請者はむしろ四足歩行のままで走行適応ができるのは哺乳類独自の適応ではないかと考え、トカゲ類の走行適応が前肢の退縮を伴うのかを調べることで、四足での走行適応(哺乳類)と二足での走行適応(主竜類)のどちらが四肢動物でより一般的なのかを明らかにすることを目指した。 まず、文献データから166種類のトカゲについて最高速度を調べた。これらのトカゲの肢骨の計測値を得るためにロンドンの大英自然史博物館の動物学収蔵庫で調査を行った。標本庫の中から、速度データのあるトカゲの乾燥骨格標本を探し出し、頭胴長、上腕骨、尺骨、橈骨、中手骨、指骨、大腿骨、脛骨、腓骨、中足骨、趾骨のうちで計測が可能なものの長さを測定した。収蔵庫のトカゲの骨格標本は全て確認し、19種、20個体の計測を行った。 本研究では系統を考慮した解析で二足歩行(前肢の退縮)と走行適応が相関して進化しているのかを調べることを最終的な目的としているが、まず予察的な解析として、各トカゲ種の(上腕骨+尺骨)/(大腿骨+脛骨)の値の平均値を独立変数、文献から得られた各種の最高速度を目的変数に設定して、通常の回帰分析を行った。その結果回帰直線は(y=-7.4736x+8.6866)であり、傾き、切片ともに有意(P<0.001)であった。傾きがマイナスであることから、前肢が相対的に短いほど、最高速度が高いということが確かめられた。この結果は四肢動物では二足歩行(後肢のみへ投資する)ことによって走行適応をするのが一般的であることを示唆している。今後、系統関係を考慮した分析を行い、結果を論文原稿としてまとめたい。
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Research Products
(4 results)