Research Abstract |
海生の珪質動物プランクトンである放散虫は, 形態的な変化に富む多様性の高い珪質殻を有しているため示準化石としての価値も高く, 地球科学分野における亟要な学習題材のひとつである. 放散虫を扱う実習では, 主に顕微鏡を用いた観察が行われるが, その小ささ(~0.5mm)故に, 特徴である微細骨格構造, 特に内部構造を確認するのは難しい. 研究代表者が昨年度に開発した「放散虫拡大レプリカ作製実習」は, マイクロX線CTスキャンによる形状計測と3D造形技術を利用して扱いやすい大きさに拡大した化石模型を原型とし, 安価で丈夫なウレタン樹脂での複製と整形作業を通して, 顕微鏡下で把握が難しい放散虫の骨格構造を体験的に理解できる新しい学習材である. この実習は扱う化石や作業難易度を変えることで, (A)専門性の高い実習にも(B)教養学的な普及活動にも展開可能であると考え, 本研究ではこれら実習系の開発を目指した。 まず, (A)に関して, 昨年度に初めて実施した大学3年次対象の実習とそのアンケート集計結果を基に実, 習内容を改良した. 複製物の問題(殻の薄い模型で生じる反り, 模型の組み立て要素の付加)の解決, 複製道具・材料の検討, 実習テキストの修正を行い, 型を増産した後, 平成25年10月に新潟大学理学部地質科学科の古無脊椎動物学実験履修生に本実習を実施した. 実習時間の短縮にも関わらず作業効率は向上し, 実習者からは放散虫の構造把握に効果的な作業と観察であったとの高評価を得た. さらに, 新たに実習の主題とそれらに合わせた化石試料を設定した, (A)には, 年代決定, 形状の普遍性・収斂性に関連する化石種, (B)には複製後の整形作業時間が短い単純で明瞭な構造の種を選び, 状態の良い試料を採取した. 今後, 3Dデータの採取と加工, 3D造形, 型取り作業を行い, 各対象学年に実習を実施して, 主題と対象化石の適当性, 作業時間と難易度, 学習効果, 興味喚起性等を評価し, 改善点を検討する.
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