Outline of Annual Research Achievements |
無尾類にも有尾類にも大腸に普通に寄生し, 宿主によって形態に変異が生じるCosmocerca属線虫は, 外来両生類に寄生した状態で移入され, 日本土着の両生類に寄生する可能性がある。そこで多くの両生類の種に寄生しているのは同一種かどうかを検討した。材料として大分県産ヌマガエル, ツチガエル, シュレーゲルアオガエル, イモリ, 滋賀県産イモリ, 新潟県産トウキョウダルマガエル, ヤマアカガエル, シュレーゲルアオガエル, モリアオガエル, アマガエル, アズマヒキガエル, 関東地方産ウシガエルに寄生していた個体を用い, そのCox1とITS2を調べた。その結果, 大分産イモリ寄生個体を除き, 各地域内の異なる宿主種に寄生している個体間の遺伝的距離は小さく, 一方同じ宿主種でも離れた地域間では寄生するCosmocercaの遺伝的距離が大きいことが示された。観察された遺伝的距離は種内変異の範囲に収まり, 全てC. japonica1種であると考えられた。これらの結果からCosmocercaの宿主特異性は低く, 各地域で様々な両生類に共有されていることが示された。また関東地方のウシガエルに寄生していたCosmocercaも外来起源でなく, ウシガエルが日本へ移入された後で日本土着カエルに由来するC. japonicaが寄生したことが示された。また分子系統樹から本種は南日本から北日本へと分布を拡大したものと推定され, おそらく氷河期に南日本から分布を広げたものと思われた。佐渡海峡を挟んだ佐渡島と本土の間でもCosmocerca個体間の遺伝的距離は小さく, 佐渡と新潟本土側へ Cosmocercaの分散が比較的新しい時代に起きた可能性が示唆された。 またカエルの十二指腸に寄生するSpiroxys japonicaについて, 中国産個体と日本産個体間で18S rDNA遺伝子ITS領域, ミトコンドリアDNA Cox1遺伝子などにどの程度の差異があるのかを比較し, 外国から入り込んだ場合にDNA解析で検出可能かどうか検討した。
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