2013 Fiscal Year Annual Research Report
高芽接ぎによるヒメコマツ孤立木からの健全種苗生産に向けた取り組み
Project/Area Number |
25925025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米道 学 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 孤立ヒメコマツ / 高芽接ぎ / 処理 |
Research Abstract |
【目的】千葉県房総半島にはヒメコマツが天然に隔離分布するが、近年急激に個体数を減少させている。ヒメコマツを系統保存するため、天然木から採種した種子を用いて実生育苗を行っているが発芽率が極めて低く育苗が困難である。そこで、カラマツ等で異なるクローンを利用される高芽接ぎ技術を応用した。高芽接ぎとは、通常の実生苗を台木とした接ぎ木と異なり、成木の枝に目的のクローンを接ぐことで、後年で当該クローンの種子が取れると言う技術である。本研究では、まず高芽接ぎがヒメコマツに適用できるか否か、条件を探るため10年生と17年生の樹齢の異なる個体に高芽接ぎを行いその可能性を検討した。 【方法】高芽接ぎを2月に行い、接ぎ方は台木の樹冠外縁部の枝に穂木を割接ぐ方法で行った。台木と穂木の接合部がずれない様に, 接ぎ木テープで縛り固定した。接ぎ木した箇所のほぼ半数に対しビニール袋で覆い保湿を試みた。なお, ビニール袋は小穴を開け, 通気性を良くした。全ての接ぎ木箇所をビニール袋と同じ大きさに加工した袋状の寒冷紗で遮光とした。ビニール袋が温湿度に及ぼす効果について調査するため、ロガーを設置し測定した。 【結果と考察】全体として見ると、ビニール袋で覆った台木では約50%の活着率を示した。一般的に接ぎ木の場合, 5ヶ月後に穂木が生きていれば活着に成功したと判断することから, ヒメコマツも同様であれば7月現在で活着している高芽接ぎは成功したと言えよう。処理別では, ビニール袋で覆った接ぎ木枝の活着率が遮光のみの接ぎ木枝に比べて, 有意に高かった。一般的に接ぎ木では湿度が高いほど活着率が高くなることから, ヒメコマツの高芽接ぎにおいても活着率に部分的保湿が活着率に好影響を与えたのであろう。ビニール袋+遮光の処理について台木の年齢によって活着率が違うかどうかを検討したところ, 17年生台木と10年生台木の間には有意な差が認められず, ビニール袋で覆うことで年齢や高さの影響を小さくできると考えられた。穂木の年齢による活着率を比較したところ有意な差は認められなかった。ビニール袋で覆った処理では, 日平均温度が約21℃で, 遮光のみを施した処理より僅かに高いのみで、穴を開けたことが温度上昇を抑制し, 高い活着率に繋がったのであろう。以上から適切な環境を整えればヒメコマツ高芽接ぎは可能であろう。
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Research Products
(1 results)