Research Abstract |
【目的】RAS(レニン―アンジオテンシン系)構成因子の1つであるAGTは, 脂肪量の増加および血圧上昇など生理機能に重要な役割を担っている。AGT発現はラット皮下及び腹腔内脂肪組織において複数の分子サイズを示すが血清AGTの分子サイズについては十分な解析が行われてはいない。また, 従来はAGTの産生臓器は肝臓であると考えられていたが, 脂肪組織でのAGTの発現が明らかとなり, さらには血清中AGTからAngIIへの変換が行われていると考えられることから, 肥満での血清中AGTの産生量ならびにRAS阻害剤投与時における血清中AGTの産生抑制を明らかにすることは, 肥満での髙血圧の改善効果を予測する上で重要である。 本研究では, ラット肝臓, 脂肪組織および血清AGTの分子サイズ並びに発現量を定量的に解析し, 肥満での血清中AGTが肝臓または脂肪組織のどちらから主に分泌供給されているのかを解明することを目的とする。 【方法】Sprague-Dawleyラット(雄, 体重150g, 4週齢, 各群n=5)にRAS阻害剤(captopril, imidapril olmesartan, losartan)を毎日約9週間腹腔内投与した。投与後, 2週間(低用量及び髙用量), 3週間および6週間(低用量)投与したラット肝臓, 腹腔内および皮下脂肪組織, 血清を採取し, これらの試料中AGT濃度についてimmuno-blot法にて解析した。なお, 定量については, 現在市販用AGTキットを用い解析中である。また, 抗体はラットAGTのC末端ペプチドを合成し, 作成した自作抗体を用いた。 【結果】腹腔内脂肪組織AGTの発現は, ACE阻害剤で有意に発現抑制が認められたが, ARBでは顕著な抑制効果は認められなかった。RAS阻害剤低用量長期投与群では, ACE阻害剤およびolmesatan群においてAGTの発現抑制が認められた。皮下脂肪組織AGTは, captorpil投与群においてのみ著名な発現抑制が認められ, 長期間投与群では, ACE阻害剤およびolmesartan群にAGTの産生抑制が認められた。肝臓ではAGTの発現量は各群で著名な変化は認められなかった。血清中AGTでは, 高度に糖が付加した高分子量AGTのみが検出され, それらはRAS抑制剤の短期間投与では, 高濃度のcaptorpil投与群においてのみ発現が抑制されたがRAS阻害剤低用量を投与した各群では, 6週間投与において, いずれの群もAGTの発現抑制が認められた。 この結果は, 降圧薬として使用されたRAS阻害剤は, RASの前駆物質であるAGTの産生も抑制し降圧効果を示す可能性も示唆された。さらに, 従来AGTの産生臓器と考えられていた肝臓でのAGTの発現量には変化が認められず, 脂肪組織においてAGTの発現量が減少していたことから, 血清中AGT量は脂肪組織でのAGTの発現量に影響を受ける可能性が強く示唆された。
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