2013 Fiscal Year Annual Research Report
注射抗がん剤の液性および投与濃度管理による静脈炎回避に関する研究
Project/Area Number |
25928028
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 結衣 九州大学, 大学病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 抗がん剤 / 静脈炎 / ベンダムスチン |
Research Abstract |
注射抗がん剤投与に伴う静脈炎は、重症化すると血管周囲組織の炎症や壊死を引き起こす重大な有害事象の一つである。一般に、薬剤の投与濃度および投与速度が静脈炎の発現リスクに関与していると考えられているが、実際にこれらの投与条件を検討することで静脈炎の回避に繋がることを示した研究は少ない。このため、静脈炎に対する有効な予防策は確立されておらず、症状発現後に、ステロイド等による対症療法が行われているのが現状である。 ベンダムスチンは静脈炎の発現頻度が高く、ステロイドの前投与や補液による希釈など経験的に様々な予防策を講じられていた。このうち、ベンダムスチンを生理食塩液500mLに溶解した患者では静脈炎の頻度が有意に低かったため、以降の治療においては、希釈液を生理食塩液500mLに変更した。その結果、静脈炎の頻度は58%から20%に有意に減少した(p=0.016)。さらに、ベンダムスチンの最終投与濃度が, 低濃度群(≦0.40mg/mL), 中間濃度群(0.41~0.60mg/mL)および高濃度群(>0.60mg/mL)における静脈炎の頻度はそれぞれ6%(1コース/17コース)、62%(18コース/29コース)および75%(9コース/12コース)であり, 最終投与濃度依存的に血管障害の頻度が上昇した。これらの知見は, ベンダムスチンの投与濃度が静脈炎に対する重要な危険因子であり、低濃度で静脈内に投与することによって静脈炎を回避できる可能性を示唆するものである。なお、本研究は、倫理審査委員会の承認を得て実施した。 本研究では、ベンダムスチンの最終投与濃度と静脈炎の発現リスクの関連を見出した。本知見は、がん治療の安全性向上に寄与すると考えられる。
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