2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗MRSA薬ダプトマイシンの血中濃度と副作用発現リスクとの関連
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25929002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 修平 北海道大学, 北海道大学病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ダプトマイシン / 血中濃度(トラフ値) / モノカルボン酸輸送担体(MCT) |
Research Abstract |
【研究目的】 本研究では、臨床上問題となっているダプトマイシン(DAP)誘発性横紋筋融解症に着目し、基礎研究と臨床研究から横紋筋融解症の発症機序の解明とリスク因子の同定を試みた。 【研究方法】 ①基礎的検討 : 骨格筋細胞に対するDAPの影響を評価するため、ヒト横紋筋肉腫由来細胞(RD細胞)を用いて実験を行った。 ・RD細胞を種々の条件(濃度や処理時間、細胞外Ca^<2+>濃度)で薬物処理した後、MTT assay法を用いて、細胞生存率を測定。 ・細胞膜障害やアポトーシスの有無を確認するため、LDH leakageや抗アポトーシスタンパクであるBc1-2、Bc1-x1のタンパク発現を測定。 ・グルコースの取り込みに関与するGLUT4 (mRNAやタンパク質)や細胞内の乳酸量の恒常性に寄与するMCT1,4の発現量をWestern blot法ならびにPCR法を用いて測定した。 ②臨床的検討 : CK上昇例(n=3)とCK非上昇例(n=10)の臨床検査値血清アルブミン、血清クレアチニン血清CK等)ならびに血中濃度(Cmin、Cmax)を比較検討した。 【研究結果】 ①DAPは骨格筋細胞に対して、有意な直接障害性を示さず(細胞外LDH漏出、Bc1発現も変化なし)に、骨格筋細胞の増殖抑制効果を示した。 ②DAPはGLUT4の発現変動を伴わずに、MCT1,4の発現を有意に低下させた。 ③CK上昇例とCK非上昇例を比較したところ、臨床検査値には有意な差は認められなかったが、血中濃度(Cmin)はCK上昇例が非上昇例と比較して、有意に高いことが明らかとなった。 【研究成果】 基礎ならびに臨床研究から、DAPは骨格筋細胞に対して濃度依存的な細胞増殖抑制作用を示す可能性が示唆された(細胞外Ca^<2+>濃度は影響を示さないことも明らかとなった)。また、その機序の一つとして乳酸動態に寄与する因子(トランスポーター)の変容が示唆された。従って、DAP誘発性の横紋筋融解症の一因として、DAPによる骨格筋細胞の乳酸代謝変容が細胞増殖障害を引き起こし、高濃度条件下での長期間曝露されることで、二次的に横紋筋融解症の起因となる骨格筋傷害細胞障害を引き起こす可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)