2013 Fiscal Year Annual Research Report
地域連携による研修会を利用した抗悪性腫瘍薬の曝露防止対策の推進
Project/Area Number |
25929020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本多 秀俊 東京大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 抗悪性腫瘍薬 / 閉鎖式薬物混合システム / 曝露防止対策 |
Research Abstract |
【研究目的】抗悪性腫瘍薬の多くは変異原性や催奇形性を有するため、飛散や曝露の防止対策が必要である。安全キャビネット内での調製、キャップ、マスク、ガウンや二重手袋着用などの対策を行っても調製者の尿から抗悪性腫瘍薬が検出た報告や曝露によりDNAがダメージを受けた報告など健康被害につながる可能性が示唆されている。近年、閉鎖式薬物混合システムが開発され、国内外のガイドラインで積極的な使用が推奨されているが、その理解不足などにより十分に普及しているとは言えない。そこで、薬剤師が抗悪性腫瘍薬を取り扱う環境改善を目的として、抗悪性腫瘍薬の取り扱いと曝露に関する研修会を開催し、その効果を検証した。 【研究方法】地域の薬剤師を対象に研修会を講義と実技の2回に分けて開催した。研修内容として抗悪性腫瘍薬の種類別の危険性、過去の曝露に関する報告、曝露防止のための設備や個人用防護器材および閉鎖式薬物混合システムの種類と有用性について講義を行い、実技はモデル薬物、針とシリンジを用いた混合・調製の操作、閉鎖式薬物混合システム(ファシール、ケモセーフ)を用いた混合・調製を行った。終了後、参加者を対象にアンケート形式で達成度や理解度を評価し本研修の検証を行った。 【研究成果】参加者数は前半講義15名、後半実技12名でアンケート回収率は各100%であった。参加者内訳として13名が薬局、2名が病院勤務であった。各施設で抗悪性腫瘍薬を取り扱っているのは12名、調剤および調製の経験者は10名であった。研修全体の評価では講義で93.3%、実技で50%が「良かった」と回答した。また、今後の業務に役立つ内容の有無については講義では93.3%、実技では75%が「ある」と回答した。具体的な内容として、講義では副作用の種類と支持療法について最も多く(53.3%評価されており、実技では各閉鎖式薬物混合システムを含めた調製手技全体を評価する回答が多かった。参加者の感想では「抗がん剤の種類、副作用と対策, レジメンを総合的に学べてよかった」「抗がん剤への意識が高まった」「実際の調製方法を知り参考になった」「職場で情報共有したい」「薬局でもレジメンの内容理解の必要性を改めて感じた」「調製者以外も被曝のリスクがあることを学んだ」等、抗悪性腫瘍薬の知識や曝露防止対策への意識の変化が示されていた。以上の結果から、今回の研修を実施することは、抗悪性腫瘍薬の知識や取り扱いに関する意識を向上させることにつながり、抗悪性腫瘍薬を用いたがん化学療法の安全性向上につながると考えられた。
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