2013 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析法による脱法ドラッグの構造解析に関する研究
Project/Area Number |
25933004
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Research Institution | 大阪府警科学捜査研究所 |
Principal Investigator |
片木 宗弘 大阪府警察本部刑事部科学捜査研究所, 科学捜査研究所化学研究室, 主席研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 合成カチノン類 / GC-MS / EIマススペクトル |
Research Abstract |
わが国で乱用される脱法ドラッグの大部分を占める合成カンナビノイド類と合成カチノン類のうち、合成カチノン類について、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)によるデータを蓄積すると共にそのスペクトルを詳細に解析することで、これらの薬物各々に共通するスペクトルの特徴あるいは構造推定に有用となる特徴を見出し、MSにより迅速かつ正確に構造の推定が可能となる分析法の構築を試みた。 GC-MSによるEIマススペクトルでは、アミンの□開裂に由来する非常に強度の強いフラグメントイオンが観察されるだけの単純なMSスペクトルで、その他構造に特徴的なイオンが非常に少なく、しかもその強度が非常に弱い。しかし、強度が低いものの構造を反映した以下の有用なフラグメン機構に基づくイオンも多数観察さ、カチノン類の構造を推定する上で非常に有用であることが判明した。 ①α開裂により生成したインモニウムイオンからのオレフィン分子の脱離。 ②ケトンのα-開裂と更に生成したカチオンからのCO分子の脱離反応。 ③メインピークを生成するα開裂とは逆側のα開裂によるインモニウムイオンの生成。 ①の脱離反応は、側鎖がC4以上である場合、あるいはNに付いたアルキル基がエチル基より大きい場合に起こり、特にアルキル鎖が長くなるほど進行しやすくなることが判明し、アルキル側鎖の推定に有用である。 また、②の反応は、カチノン類の大きな特徴であり、構造が酷似した他のフェネチルアミン系薬物との識別をする上で有力な手掛かりとなる。また、芳香環側の構造の推定にも有効となることも判明した。 ③の開裂は、強度は弱いもののメインとなるα-開裂によって生成するフラグメントイオンと組み合わせることで芳香環に結合しているアルキル鎖の識別が可能となった。
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