2013 Fiscal Year Annual Research Report
葉脈走行パターン解析と高感度DNA分析による高度消化食物残渣における植物種の同定
Project/Area Number |
25933005
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Research Institution | 兵庫県警察科学捜査研究所 |
Principal Investigator |
櫻田 誠 兵庫県警察科学捜査研究所法医科, 警察研究職員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 消化残渣 / リアルタイムPCR / 葉脈 |
Research Abstract |
殺人事件の被害者から採取される食物消化残渣の検査は、被害者の生前の足取りや死後経過時間を知る上で犯罪捜査上極めて重要な検査の一つである。本研究では、高度に消化されながらも消化管内に残存していることの多い葉菜類について、①顕微鏡を用いた葉脈の走行パターン解析、②trnL-P6loopを標的にしたリアルタイムPCRによる融解曲線分析に着目して、植物種の新たな同定法の開発について検討した。 葉脈の走行パターン解析にっいては、葉部の一部から水酸化ナトリウムを用いて葉脈標本を作製し、顕微鏡で詳細に観察することによって行った。葉脈は、太い主脈から側脈へと枝分かれし、さらに細かい葉脈に分岐する。キャベツ、ハクサイを観察した結果では、いずれも双子葉植物であることから葉脈は網状を呈していた。この網状構造は、観察した部位においては、大きさ、形状に違いが認められるものの、その構造はかなり複雑であった。またその最小構造単位は約3×6mm程度であり、葉脈パターンの違いを観察するためには、ある程度の大きさが必要であり、実際の高度消化残渣に応用するには、さらなる検討が必要であると考えられた。 trnL-P6loopを標的にしたリアルタイムPCRによる融解曲線分析では、葉菜7種(キャベツ、ハクサイ、コマツナ、キクナ、レタス、タマネギ、ネギ)について検討した。植物試料から市販のキットを用いてDNAを抽出し、PCRに供した。trnL-P6loopを標的としたプライマー配列は、Taberlet等(*)が報告しているものを使用した。リアルタイムPCRの前に、通常のPCRを行い、アガロースゲルで電気泳動して確認した結果、いずれの植物試料で単一バンドによる増幅産物を確認することができた。次に、最適な条件下でリアルタイムPCRを行い、融解曲線分析を行った結果、trnL6-P6を用いた解析では、標的とする領域が小さい分、高度な消化を受けた植物試料でも検出することが可能であった。しかし、同属試料の中には融解温度での識別は困難なものもあり、高感度ではあるが識別力において問題点が残された。消化残渣における植物種同定についは、試料に残存するDNAの質・量を考慮し、その検査法の選択をする必要性があると判断された。 (*)Nucleic Acids Research 2007 35 (3)
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