2013 Fiscal Year Annual Research Report
放射性セシウム汚染土壌による内部被ばくに対するリスク評価の精緻化
Project/Area Number |
25933006
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 一寿 浜松医科大学, 実験実習機器センター, 技術職員
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 放射性セシウム / 内部被ばく / 線量評価 |
Research Abstract |
福島第一原子力発電所事故時に放出された放射性セシウム(Cs)は土壌中の粘土鉱物のフレイドエッジサイトに強固に保持され、雨水等にほとんど溶出しないことが知られている。一方、現行の内部被ばく線量評価体系では、全てのCs化合物に対して体内吸収率は一律に100%と仮定されている。したがって、懸念される汚染土壌粒子の周辺住民および除染作業員に対する吸入・経口ばく露評価の更なる精緻化には、土壌粒子吸着態Csの体液への溶出特性の解明が必要である。その前段階として、Csの土壌粒子への吸着特性(時間・濃度依存性)の把握を試みた。 具体的には、福島県を含む国内の代表的な土壌である黒ボク土、沖積土および黄色土を対象として, Cs-137をトレーサーに用いた振とう試験により吸着量を評価した。また、フレイドエッジサイト量の指標である放射性セシウム捕捉ポテンシャル(RIP)を測定した。 経時的な振とう試験(固液比1:5、25℃、120rpm、1.5~48時間 : 6時間区、Cs濃度10mM)の結果、1.5時間後には大部分のCsが固定され、24時間後には吸着平衡に達していた。濃度別の振とう試験(固液比1:5、25℃、120rpm、24時間、Cs濃度0.01~400mM : 15濃度区)の結果、低濃度における吸着量は、黄色土≒沖積土>黒ボク土であり、RIPとの相関が認められた。他方、高濃度における吸着量は、土壌の種類による差を示さず、また、飽和状態には達しなかった。 体液溶出試験に使用する土壌粒子吸着態Csを調製するための知見が獲得できた。なお、実環境下の発電所サイト外におけるCs-137汚染土壌の濃度レベルは本試験の濃度範囲よりも6桁以上低いため、事故により放出されたCsは短時間で、ほぼ全量が沈着先の土壌中に強く固定されたと考えられる。
|