2013 Fiscal Year Annual Research Report
マンガンがNNMT活性に影響を及ぼし、パーキンソン病を発症させる機序の解明
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25933011
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
森 弥生 福島県立医科大学, 衛生学・予防医学講座, 主任医療技師
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Parkinson's Disease / マンガン / 1-methylnicotinamide |
Research Abstract |
近年患者数が増加しているParkinson's Disease (PD)の原因として、マンガン(Mn)中毒によるparkinsonismとは別に、Idiopathic Parkinson's Disease (IPD)にも、Mnの慢性的曝露の関与が疑われている。そのうち、1-methylnicotinamide (MNA)もPDとの関連が示唆されている物質である。Mnがnicotinamide N-methyltransferase (NNMT)活性に影響を及ぼし、nicotinamide (NA)からMNAへの代謝が亢進し、神経毒性が生じるのではないか、という仮説をたて検証のための実験を行った。以前、マウス初代神経細胞を使用し、MNAが細胞死を亢進させる結果を示したが、今回、Mnによる細胞死をMTT assayにより測定した。同時に、液体クロマトグラフィーにより培地中のMNA濃度を測定するとともに、リアルタイムPCRによりメッセンジャーRNA (mRNA)レベルでNNMT亢進の有無を調べた。また、市販のKitにより、培地中のH_2O_2濃度を測定した。培養開始7日後にMnを各6wellずつ0.1μM、1μM、10μMの濃度になるように加えて培養を継続し、その5日後(培養12日目)に各測定を行った。NNMTのmRNAの測定はその6日後(培養18日目)にも行った。Mnを加えないものをcontrolとして結果を比較した。生存率はMn濃度が高くなるにつれ低くなる傾向にあり、Mn濃度10μM濃度で有意に低下していた。H_2O_2濃度とMNA濃度は、生細胞数あたりで調整した値で比較した。H_2O_2濃度は、Mn濃度1μMと10μMで有意に増加していた。MNA濃度は、有意差はなかったものの、Mn濃度1μMに高いピークがあった。NNMTのmRNAの発現は、n数の不足のため有意差の検定はできなかったが0.1μMで約3倍であった。培養18日目のNNMTのmRNAは、Mn濃度0.1μMで7倍、1μMで4倍となっていた。Mn濃度1μMではmRNAは変化しないがMNA濃度は増加していたことから、Mnは1μM濃度で直接NNMTタンパクの活性を亢進させることが示唆された。Mnは培養期間が長いほど細胞のNNMTをmRNAレベルで増加させることが示唆された。このことから、より長期にMnが存在すればMNA濃度が高まり、細胞死をもたらす可能性がある。IPD発症の原因を、Mnの日常的な摂取とビタミンの一種であるNAの代謝との関連性に注目した研究は他にない。本研究により、短期間では細胞死を起こさない濃度のMnがNNMTのmRNAを増加させることが示唆されたが、長期にわたる低濃度のMnの作用についてさらに解明が必要である。
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