Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小平 秀一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 研究開発センター長 (80250421)
金松 敏也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, グループリーダー (90344283)
篠原 雅尚 東京大学, 地震研究所, 教授 (90242172)
伊藤 喜宏 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30435581)
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Outline of Annual Research Achievements |
2011年東北地方太平洋沖地震で発生したのと同様なプレート境界断層浅部すべりイベントの過去の時空間分布と, すべり域における断層のすべり特性を解明するために, 日本海溝軸近傍の深海域において高分解能地震波探査, 海底堆積物調査, 長期地震・地殻変動観測を実施した. 今年度は, 日本海溝中南部で地震探査, 中北部で堆積物調査, 中部において地震・地殻変動観測を実施した. 地震探査の結果から, プレート境界断層最浅部の地質構造が示す日本海溝沿いの変化の様相がより広域で把握されつつある. それに基づいて推定された沈み込む側の太平洋プレート上における堆積層厚さの分布から, 2011年東北地方太平洋沖地震時に大きな断層すべりを生じた範囲と, 堆積層が薄くなっている範囲との対応関係が明らかとなった. また, H26年度以来, 取得を続けてきた海底堆積物の詳細な分析の結果, 日本海溝中北部では, すべりイベントに由来する堆積物層はその層厚が大きい特徴を示すことがわかった. また, 試料の年代測定を進め, 過去9,000年の年代決定ができるようになった. 海底地震計データから浅部すべりに伴う微動検知するためのツールとして振動方向解析, 及び単独観測点法の開発を進めるとともに, H26年度から今年度5月まで実施した地震計群列観測のデータへの適用を試みた. 2011年に得られたデータに適用することで, 2011年東北沖地震前に発生した微動を検知可能であることを検証したほか, その詳細な特徴を明らかにすることができた. また, 海溝軸を挟んだ音響測距連続観測から, H26年度までに行った予備観測の結果と同様, プレート運動に伴う基線長の変化レートは, 断層浅部で定常すべりが発生していると仮定した場合に比べ, 有意に小さいことが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震探査を実施する調査航海の日程が台風の影響で大きく変更となったため, 当初予定より探査測線間隔が粗くなってしまったが, これまでの初期的な処理・解析の結果, 海溝軸近傍における海底下構造のマッピングに耐えうるデータが取得できていることが確認された. 堆積物調査・解析も, 浅部すべりイベントの履歴復元に向け順調に進んでおり, 特に今年度は海溝軸部で地震履歴解析解析の上で, 良好な試料を得ることができた. 海底地震計データの解析手法の開発とその有効性の確認も当初計画の通り進んでおり, 現在進行中の観測データの解析にもとづく浅部すべりの現状把握を行うための基盤を形成することができた. 海溝軸近傍での長期地震・地殻変動観測も計画通りに進行中である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画を立案した当初に想定したより, 調査航海日数が削減される傾向にあるため, 限られた日数を有効に活用して最大限の研究成果を挙げるように努めている. 海溝軸高分解能反射法探査は, 当初計画通りに調査海域を移しつつデータの取得が進んできている. 今後, 調査航海日数が不足するような場合には, 測線間隔を調整するなどして, 日本海溝全域における海溝軸近傍の構造マッピングを当初計画通りに完了させることができるようにする. 堆積物調査・解析では, 日本海溝の南部から北部の広い範囲で試料が得られつつあるが, 地層採取がまだ十分でない海溝軸部を中心として, 試料採取地点の空間密度の向上を図ることで, 乱泥流イベント層の時空間分布に関する検討を推進する. 海底地震・地殻変動観測のうち, 2011年に大規模浅部すべりが発生した日本海溝中部でのデータの一部はすでに回収されており, これを用いることで現時点での浅部すべり現象の実態解明を進める. また, 2011年の地震時すべりが小さかった領域のうち, 地震後のすべり活動が活発化していると考えられる日本海溝南部において, 地形・地下構造探査の結果にもとづいて地震・地殻変動観測網を設計・配置し, 中部との対照観測に着手する.
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