2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26000005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶田 隆章 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40185773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 静児 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40301725)
黒田 和明 東京大学, 宇宙線研究所, 名誉教授 (00242165)
大橋 正健 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (80213833)
三代木 伸二 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (20302680)
都丸 隆行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 准教授 (80391712)
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Project Period (FY) |
2014 – 2018
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Keywords | 重力波 / 中性子星連星 / レーザー干渉計 / ブラックホール / 一般相対論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究内容としては、まず平成27年度末に実行したKAGRAの試験運転の見直しを行い、より良い状態でレーザー干渉計の運転を行うことから着手した。これについては格段の改善がみられ、特にレーザー干渉計の運転率(安定性)が85%から90%以上へと向上した。これは今後のコミッショニングにとって非常に重要なことで、デジタル制御系が順調に動いていることを実証するものである。 この後、レーザー干渉計を一旦解体し、低温鏡の装着に向けた準備を進めた。最初に実験室からトンネルに続く扉を閉め、エアフィルターを全て稼働させて、クリーン度を上げた。また、研究者は基本的にクリーンスーツを着用して作業を行っている。以上の対応は本研究の消耗品費を活用して行ったが、その効果は顕著であり、クリーンブース外でもISO Class 5の環境を実現できている。現在、この状況で、各種防振系の構築作業が続けられているところである。一方、サファイアミラー関連の準備も着々と進んでおり、その懸架法についてデザインを確定させた。特筆すべきは、富山大学に新たにサファイアミラーを扱うためのクリーンルームを設置したことで、KAGRA施設の直近ともいえる場所で、ミラーにサファイア片を接着するための作業をここで行うことが可能となった。今後、平成29年度の早期に、その本番となる作業が開始される予定である。また、制御回路も順調に製作されてミラー制御装置に組み込まれつつあり、デジタル制御系との調整も進んでいる。 現在の各サブグループで進められている研究開発の状況を研究者全体で把握するための会合を、平成28年度末に新潟大学で開催し、サブグループ間の調整に必要な議論を活発に行った。特に、若手研究者の新規参入に向けた取り組みについても意見交換した。 以上の当初研究計画に加え、平成28年12月から調整金等交付分により、低温ミラー周りの光学系と駆動装置およびそれを制御するための電子回路を前倒しして製作を開始した。これは上述のミラー作業環境の整備との相乗効果があり、低温ミラー装着に関わる作業を加速すると期待している。こうすることにより、最終的にはKAGRA本格運転までの期間を短縮するとともに干渉計のコミッショニングにいち早く取りかかることが可能となる。これは米国LIGOの重力波初観測により幕を開けた重力波天文学に、国際観測ネットワークの一員として参加するためにも必須である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた低温ミラー装着に向けた準備を着々と進め、それを実行できたということで、本研究はおおむね順調に進展していると言える。また、平成27年度末に行った試験運転を、よりよい状態で再現できたことは本研究が順調に進展していることを示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
重力波望遠鏡KAGRAの共同研究者は既に国内外合わせて200人を超えているが、今後もKAGRAの研究に参加する研究者を増やしていくことが大切である。これについては、神岡に近い富山大学に新たな研究拠点を設置するなどの努力をしてきた。今後も新潟大などに拠点を増やすことを検討している。それによって幅広い研究組織を構築することができ、学生を含む若手研究者が増えることや、新たな感度向上方法の発案などが期待できる。 本研究では最先端研究基盤事業及び概算要求による施設整備費により整備された装置を出発点とし、その迅速な運転開始及び標準量子限界をも超える高度化のための先進的技術を開発することを目指している。それらの技術を備え付けた最先端装置のコミッショニングとその安定動作を迅速に行い、できるだけ早い時期に重力波の観測を開始することが目標である。 この目標を本研究期間内に確実に達成するため、いくつかのマイル・ストーンを設定している。まず、常温の鏡を用いたシンプルな干渉計を動作させ、3kmという大型レーザー干渉計を動作させるというマイルストーンについては平成27年度中に達成することができた。この経験をもとにシステムに改良を加えることは平成28年度に実現した。今後、この巨大なレーザー干渉計に、光のリサイクリングシステム、干渉信号中のノイズ除去を加え、更には鏡も極低温で動作させて、重力波観測を行うことを目標としている。これらの技術を盛り込んだ干渉計の動作を本研究期間中に達成したいと考えているが、平成29年度は、このうち極低温レーザー干渉計を運転することを予定している。
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Research Products
(91 results)
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[Journal Article] Vacuum and cryogenic compatible black surface for large optical baffles in advanced gravitaional-wave telescopes2016
Author(s)
Tomotada Akutsu, Yoshio Saito, Yusuke Sakakibara, Yoshihiro Sato, Yoshito Niwa, Nobuhiro Kimura, Toshikazu Suzuki, Kazuhiro Yamamoto, Chihiro Tokoku, Shigeaki Koike, Dan Chen, Simon Zeidler
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Journal Title
Optical Materials Express
Volume: 6
Pages: 1613-1626
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Measurement of Schumann Resonance at Kamioka2016
Author(s)
S. Atsuta, T. Ogawa, S. Yamaguchi, K. Hayama, A. Araya, N. Kanda, O. Miyakawa, S. Miyoki, A. Nishizawa, K. Ono, Y. Saito, K. Somiya, T. Uchiyama, M. Uyeshima and K. Yano
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Journal Title
Journal of Physics : Conference Series
Volume: 716
Pages: 12020
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Active damping performance of the KAGRA seismic attenuation system prototype2016
Author(s)
Yoshinori Fujii, Takanori Sekiguchi, Ryutaro Takahashi, Yoichi Aso, Mark Barton, Fabian Erasmo Peña Arellano, Ayaka Shoda, Tomotada Akutsu, Osamu Miyakawa, Masahiro Kamiizumi, Hideharu Ishizaki, Daisuke Tatsumi, Naoatsu Hirata, Kazuhiro Hayama, Koki Okutomi, Takahiro Miyamoto, Hideki Ishizuka, Riccardo DeSalvo and Raffaele Flaminio
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Journal Title
Journal of Physics : Conference Series
Volume: 716
Pages: 012022
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] KAGRA用防振装置の開発XX2017
Author(s)
高橋竜太郎, 大石奈緒子, 石崎秀 晴, 佐藤直久, F.E. Pena Arellano, M. Barton, 麻生洋一, R. Flaminio, 山元一広, 内山隆, 関口貴令, 宮川治, 上泉眞 裕, KAGRA collaboration
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] KAGRAにおけるPower Recycling鏡の防振懸架系システムの開発Ⅱ2017
Author(s)
正田亜八香, 藤井善範, 高橋竜太郎, 大渕喜之, 浦口史寛, 奥富弘基, 関口貴令, 大石奈緒子, 麻生洋一, R. Flaminio, 山元一広, 内山隆, 宮川治, 上泉眞裕
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] KAGRAにおける腕共振器鏡の低周波防振装置の開発2017
Author(s)
奥富弘基, 高橋竜太郎, 石崎秀晴, 佐藤直久, 宮本昂拓, 関口貴令, 正田亜八香, 藤井善範, 麻生洋一, R. Flaminio, 山元一広, 内山隆, 宮川治, 上泉眞裕
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] KAGRAデジタル制御系用DAC/ADCの動作試験2017
Author(s)
鍛治毅, 横澤孝章, 神田展行, 田越秀行, 宮川治, 苔山圭以子, 山本尚弘, 三代浩世希, 上泉眞裕, 粟井恭輔, 三代木伸二, 佐々木幸次
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] 重力波望遠鏡KAGRAの低温動作に向けた主干渉計開発2017
Author(s)
道村唯太, 麻生洋一, 宗宮健太郎, 宮川治, 苔山圭以子, 廣瀬榮一, 阿久津智忠, 榎本雄太郎, 小森健太郎, 有冨尚紀, 下田智文, 新井宏二, 山本博章
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] 重力波検出器KAGRAにおける環境磁場変動による雑音の見積もり2017
Author(s)
田中宏樹, 端山和大, 山元一広, 宮本昂拓, Kieran Craig, 木村誠宏, 都丸隆行, 鈴木敏一, 牛場崇文, 新谷昌人, 梶田隆章
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] 大型低温重力波望遠鏡KAGRAにおける補助光学系の開発Ⅳ2017
Author(s)
阿久津智忠, Simon Zeidler, 両角達彦, 齊藤芳男, 麻生洋一, 大渕喜之, 内山隆, 苔山圭以子, 道村唯太, 三代浩世希, 陳沿佑, 三代木伸二
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] 大型低温重力波望遠鏡KAGRAにおけるTransmission Monitor Systemの開発Ⅱ2017
Author(s)
両角達彦, 阿久津智忠, 三代木伸二, 都築俊宏, 道村唯太, 麻生洋一, 片山純子, 浦口史寛, 大渕喜之, 池之上文吾, 福嶋美津広
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] KAGRAにおける輻射圧キャリブレータの開発2017
Author(s)
井上優貴, 阿久津智忠, 牛場崇文, 神田展行, 苔山圭以子, Richard Savage, 鈴木敏一, 宍戸高治, 都丸隆行, 灰野禎一, 道村唯太, 宮本昂拓, 山本尚弘, 横澤孝章
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] KAGRA用レーザー強度安定化システムの開発Ⅲ2017
Author(s)
古畑貴行, 松島房和, 森脇喜紀, 小林かおり, 加川智大, 杉本裕介, 土井康平, 川村静児, 宮川治, 苔山圭以子, 中野雅之, 阿久津智忠, 麻生洋一, 宗宮健太郎
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2017-03-17
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[Presentation] 重力波天文学入門2017
Author(s)
安東 正樹
Organizer
第23回 ICEPPシンポジウム
Place of Presentation
岳見山荘(長野県北安曇郡)
Year and Date
2017-02-19 – 2017-02-20
Invited
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[Presentation] 重力波望遠鏡KAGRAにおける干渉計の補助ロックのためのグリーンレーザーの開発2016
Author(s)
蒲原尚吾, 酒本春人, 横川和也, 松島房和, 土井康平, 森脇喜紀, 川村静児, 宮川治, 苔山圭以子, 中野雅之, 寺田総一, 阿久津智忠, 麻生洋一, 上田暁俊, 大石奈 緒子, 道村唯太, 宗宮健太郎
Organizer
日本物理学会北陸支部学術講演会
Place of Presentation
富山大学(富山県富山市)
Year and Date
2016-11-26
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[Presentation] KAGRA低温系の現状Ⅱ2016
Author(s)
山元一広, Kieran Craig, 梶田隆章, 宮本昂拓, 田中宏樹, 萩原綾子, 木村誠宏, Rahul Kumar, 鈴木敏一, 都丸隆行, KAGRA Cryogenics Subgroup
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎大学(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-09-22
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[Presentation] KAGRA低温懸架装置の性能評価2016
Author(s)
宮本昂拓, 都丸隆行, Kieran Craig, 鈴木敏一, 田中宏樹, 萩原綾子, 山元一広, Rahul Kumar, 梶田隆章
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎大学(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-09-22
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[Presentation] KAGRA用防振装置の開発XIX2016
Author(s)
高橋竜太郎, 大石奈緒子, 石崎秀晴, 佐藤直久, F. E. Pena Arellano, M. Barton, 麻生洋一, R. Flaminio, 山元一広, 内山隆, 関口貴令, 宮川治, 上泉眞裕, KAGRA collaboration
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎大学(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-09-22
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[Presentation] KAGRAにおけるPower Recycling鏡の防振懸架系システムの開発2016
Author(s)
正田亜八香, 藤井善範, 高橋竜太郎, 奥富弘基, 関口貴令, 平田直篤, 石崎秀晴, 阿久津智忠, 大石奈緒子, 麻生洋一, R. Flaminio, 山元一広, 内山隆, 宮川治, 上泉眞裕
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎大学(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-09-22
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[Presentation] KAGRAにおける腕共振器鏡の大型防振装置の開発2016
Author(s)
奥富弘基, 高橋竜太郎, 石崎秀晴, 佐藤直久, 関口貴令, 正田亜矢香, 藤井善範, 平田直篤, 阿久津智忠, 麻生洋一, R. Flaminio, 山元一広, 内山隆, 宮川治, 上泉眞裕
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎大学(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-09-22
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[Presentation] KAGRA用入射光学系の開発(5)2016
Author(s)
中野雅之, 川村静児, 宮川治, 廣瀬榮一, 苔山圭似子, 上泉眞裕, 麻生洋一, 奥富弘基, 道村唯太, 宗宮健太郎, 松島房和, 森脇喜紀, KAGRA Collaboration
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎大学(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-09-21
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[Presentation] 計算機を利用したKAGRAの制御(Ⅷ)2016
Author(s)
宮川治, 苔山圭以子, 三代浩世希, 上泉眞裕, 粟井恭輔, 三代木伸二, 佐々木幸次, 高橋弘毅, 山本尚弘, KAGRA Collaboration
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎大学(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-09-21
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[Presentation] 計算機制御における評価システムの開発2016
Author(s)
佐々木幸次, 高橋弘毅, 三代浩世希, 上泉眞裕, 粟井恭輔, 三代木伸二, 山本尚弘, 苔山圭以子, 宮川治
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎大学(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-09-21
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[Presentation] KAGRA 用レーザー強度安定化装置の開発Ⅱ2016
Author(s)
杉本裕介, 森脇喜紀, 松島房和 川村静児, 宮川治, 苔山圭以子, 中野雅之, 麻生洋一, 宗宮健太郎, 矢野和城, 佐藤孝, 大河正志, 齊藤高大, 志賀和成, 上原知幸, 大前宣昭
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
金沢大学(石川県金沢市)
Year and Date
2016-09-15
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[Presentation] Installation of Input Mode Cleanerof iKAGRA2016
Author(s)
Shogo Kambara, Masayuki Nakano, Keiko Kokeyama, Osamu Miyakawa, Seiji Kawamura, Eiichi Hirose, Youichi Aso, Kentaro Somiya, Fusakazu Matsushima, Yoshiki Moriwaki
Organizer
Gravitational Wave Advanced Detector Workshop 2016
Place of Presentation
エルバ島(イタリア)
Year and Date
2016-05-22 – 2016-05-28
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