2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26000005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶田 隆章 東京大学, 宇宙線研究所, 教授
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Project Period (FY) |
2014 – 2019
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Keywords | 重力波 / 中性子星連星 / レーザー干渉計 / ブラックホール / 一般相対性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、大型低温レーザー干渉計KAGRAにとって最も重要な構成要素であるレーザーと低温ミラーについて記述する。これまで光源となるレーザーは出力2Wクラスのものを使用していたが、高出力レーザーを使う環境が整い、出力40Wのものに交換した。また、低温ミラーについてはファブリーペロー光共振器の入射側の2個が完成した。このミラーは、光を透過させて使うため、吸収が極めて小さいことが要求される。この性能を持たせるために、低吸収のサファイア基材を研磨・コーティングしたものである。このミラーは光学的な特性評価を行った後に、低温ミラー懸架系に組み込まれ、最終的にKAGRAに装着された。この作業の後に低温試験を行い、全ての低温ミラーが約20Kに冷却できることを確認した。ミラーの周囲には、散乱光を防ぐためのバッフルが必要であるが、これについても全てが低温容器内に設置された。光学系として最後となるのは、本研究の中心テーマともいえる出力モードクリーナーであるが、それも設置されて性能評価が行われている。 次に、防振系についてはその全てが組み上がり、その制御方法の確認と改良が行われた。特に、低周波で揺れている振り子にダンピング制御を施すことにより揺れを早くおさめることに成功した。これは長基線レーザー干渉計の運転にとって極めて大事なことであり、観測体制に一歩近づいたということになる。 データ解析の際に重要な情報となる環境データについても、数多くの環境モニターが設置され、外部からもこれが監視できるような体制が整えられた。データ解析については、KAGRA内でのデータの取り扱い等についてのルール作りも行われ、今後は解析ソフトウェアの開発が続けられることになる。当然のことながら、国際共同観測に参加する前に、データ解析ツールの共有なども必要であるため、国際的な会合も頻繁に行われるようになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は本研究の最終年度であり、大型低温レーザー干渉計を完成し、コミッショニングを経て重力波観測を実行する予定であった。しかしながら、シグナルリサイクリング光学系防振装置の特性評価を行ったところ、設置作業を行った際の温度と環境温度が変化している等の理由により、充分な特性が出ていないことが判明した。このため、防振系の再調整が必要となり、当初計画通りの低温レーザー干渉計の完成には至らなかった。ただし、4個のサファイアミラーを冷却することや、それを用いた低温運転については順調に整備が進んでおり、次年度まで期間を延長すれば、目標を達成できる見通しが立っている。以上のことから判断して、本研究が中途で終わることはなく、やや遅れている状態であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、3km基線長の大型低温レーザー干渉計KAGRAを完成させることを最優先する。次に、数回の試運転と、それに続く雑音低減化作業を繰り返すことにより、重力波を観測するための感度を出す。その後に、LIGOやVirgoとの国際共同観測○3に参加する予定である。既にLIGOやVirgoとの観測に関わる打ち合わせを進めており、データ解析作業を共同で行うための準備にも着手している。KAGRAが国際共同観測ネットワークに参加すれば、重力波源の位置特定精度が大幅に向上すると期待されており、重力波天文学の展開に大きな貢献ができると考えている。 また、KAGRAの共同研究者は国内外合わせて300人を超える規模になっている。特に海外からの若手研究者(学生を含む)が増えており、また、本研究に関わって雇用される外国人ポスドクも増えている。これは国際研究拠点をめざすKAGRAとしてはとても良い状態であり、今後も活発な若手研究者を惹きつけることが大事だと考えている。 本研究では最先端研究基盤事業及び概算要求による施設整備費により整備された装置を出発点とし、その迅速な運転開始及び標準量子限界をも超える高度化のための先進的技術を開発することを目指している。それらの技術を備え付けた最先端装置のコミッショニングとその安定動作を迅速に行い、できるだけ早い時期に重力波の観測を開始することが目標である。さらに、極低温ミラーというユニークな最先端技術を、次世代重力波望遠鏡計画のために供給したいと考えている。
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Research Products
(59 results)
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[Journal Article] Demonstration for a two-axis interferometric tilt sensor in KAGRA2018
Author(s)
Keiko Kokeyama, June Gyu Park, Kyuman Cho, Shin Kirii, Tomotada Akutsu, Masayuki Nakanoa, Shogo Kambara, Kunihiko Hasegawa, Naoko Ohishi, Kohei Doi, Seiji Kawamura
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Journal Title
Physics Letters A
Volume: 382
Pages: 1950-1955
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 大型低温重力波望遠鏡KAGRAにおけるサファイアファイバーの機械的Q値の測定2019
Author(s)
宍戸高治, 牛場崇文, 上田綾子, 鈴木敏一, 都丸隆行, 生井義一, 萩原綾子, 長谷川邦彦, 宮本昂拓, 山田智宏, 山元一広
Organizer
日本物理学会第74回年次大会
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[Presentation] KAGRA status2018
Author(s)
Kentaro Somiya on behalf of KAGRA Collaboration
Organizer
9th Einstein Telescope Symposium
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] KAGRA+2018
Author(s)
Kentaro Somiya on behalf of the KAGRA collaboration
Organizer
Gravitational-Wave Advanced Detector Workshop 2018 (GWADW2018)
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] 大型低温重力波望遠鏡KAGRAの防振サスペンションに関する研究報告2018
Author(s)
神津稜平, Barton Mark, Pena Fabian, 大石奈緒子, Tapia Enzo, 平田直篤, 吉岡聡也, 正田亜八香, 藤井善範, 麻生洋一, 梶田隆章
Organizer
日本物理学会第2018年秋季大会
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