2017 Fiscal Year Annual Research Report
リピート結合分子をプローブとしたトリヌクレオチドリピート病の化学生物学研究
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26000007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中谷 和彦 大阪大学, 産業科学研究所, 教授
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Project Period (FY) |
2014 – 2018
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Keywords | トリヌクレオチドリピート / 低分子 / 神経変性疾患 / 遺伝子疾患 / 分子設計 / スクリーニング / 分子合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々の開発するトリヌクレオチドリピート結合分子を用いて、リピート伸長とリピートRNAの機能を低分子で調節する化学を拓き、トリヌクレオチドリピート病の新しい治療法開発に資する創薬リード化合物の創製を目指して、以下4つの研究項目、1)リピート結合分子の性能向上と創製、2)結合分子のリピート不安定化誘導と分子機構の解明・短縮分子探索、3)結合分子によるToxic RNAの捕捉、4)RAN Translationの分子機構解明と低分子による調節原理導出、を実施する。平成29年度は、研究項目1)に関して、前年度に引き続き、CTG、CUGリピートを標的とする、アミノフェナンスロリン誘導体の2量体の合成につづいて、筋緊張性ジストロフィー1型(DM1)の細胞モデルならびにマウスモデルを用いた、スプライシング異常修復活性を評価した。また、ジアミノイソキノリン誘導体については、精密な構造活性相関研究を実施し、CUGリピートとCCGリピートを区別する分子を獲得した。さらに、環状二量体(CMBL)のミニライブラリーのリピートに対する結合並びに生物活性評価を進めた結果、新たに、r(CAG)リピートに結合した複合体のX線構造解析にも成功している。研究項目2-1)では、新たにPCRを基盤とするハイスループットスクリーニング系の構築を進め、これを達成している。研究項目3)に関しては、前年度に引き続き、SPR法によるRNA結合評価をすすめ、5塩基リピートRNAが疾患発症の原因となっている脊髄小脳失調症31型(SCA31)に結合する分子NCDの同定、さらに、その結合構造の獲得に成功した。研究項目4)については、ポーランドアダムミツケビッチ大学との共同研究により進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、中間評価を受け、A評価を受けた。具体的には、ハンチントン病に関係するCAGリピート結合分子NAについて、論文を再度纏め直し現在Cellに投稿中である。NAを投与したハンチントンマウスモデルの線条体において、リピート短縮効果が認められる画期的な結果であるため、審査員からの厳しい(無理な)注文が多く、対応に苦慮していたが、阪大医学部、カナダSick Kidds Instituteとの共同研究により、可能な限りの修正を完了し再投稿している。また、r(CAG)リピートと環状分子CMBL3aとの共結晶のX線構造解析が、共同研究先のポーランド科学アカデミー生物化学研究所にて成功した。得られた構造は我々の想像を超えるものであり、新たな分子設計に極めて有用な情報を提供すると考えている。さらに、5塩基リピートRNAが疾患発症の原因となっている脊髄小脳失調症31型(SCA31)に結合する分子NCDをSPRによるスクリーニングにより同定し、さらに、その複合体構造のNMRによる解析に成功した。この研究は、阪大医学部、千葉工大との共同研究により推進された。SCA31のショウジョウバエモデルを用いたフェノタイプアッセイでは、顕著な改善効果が認められており、より毒性の低い分子の開発が期待されている。新たにPCRを基盤とするハイスループットスクリーニング系の構築を進め、これを達成するなど、概ね計画通りに進行していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度を迎え、全ての研究課題の纏めを強く意識するとともに、この4年間の研究により大きく広がった共同研究のネットワークを活用して、リピート病を標的とする低分子創成をさらに加速させる取り組みを検討してゆく。 具体的な研究課題としては、DM1に対するジアミノイソキノリン誘導体をモデル細胞ならびにモデルマウスにより評価し、分子設計、結合解析が、実際のフェノタイプにどのように影響をおよぼすかを考察する。リピート結合分子のハイスループットスクリーニングを、創薬企業提供のミニ化合物ライブラリーに適用し、結合分子が探索可能かどうか、どの様な分子が結合性を示すかを考察する。4年間進捗が思わしくなかったRAN翻訳については、共同研究先から評価系を導入し、研究室が保有するリピート結合分子による効果を検証し、纏める。
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Research Products
(36 results)