2015 Fiscal Year Annual Research Report
多機能なコヒーレントナイキストバルスの提案とそれを用いた超高速・高効率光伝送技術
Project/Area Number |
26000009
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中沢 正隆 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80333889)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣岡 俊彦 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (40344733)
吉田 真人 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10333890)
葛西 恵介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (80534495)
|
Project Period (FY) |
2014 – 2018
|
Keywords | 高速光伝送 / ナイキストパルス / ディジタルコヒーレント / 周波数利用効率 / 光時分割多重 / パルス整形 / 超短光パルス / QAM |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はナイキストパルス伝送による高速化・高効率化を実証するために、(a)超高速ノンコヒーレントナイキストパルス伝送におけるロールオフ率の最適化ならびに非線形波動伝搬の解析、(b)コヒーレントナイキスト伝送用パルス光源の開発とディジタル信号処理の高度化、ならびに、(c)ナイキストレーザの定常発振波形と最適動作条件に関する理論解析に取り組んだ。 (a)に関しては、Qマップ法と呼ばれる計算機解析ならびに非線形シュレディンガー方程式による摂動解析を用いて、ナイキストパルスの重なりに起因する非線形光学効果の問題点を新たに見出した。そしてこの効果を低減するためには、ナイキストパルスの帯域を定めるロールオフ率と呼ばれるパラメータを0.5付近に設定することが最適であることを明らかにした。さらに、シンボルレートを1.28 Tbaudに増大することにより、単一チャネル5.12 -Tbit/sナイキストパルス信号の生成と多重分離を新たに実現した。 (b)に関しては、コヒーレントナイキストパルス伝送に適した高いOSNRを有する周波数安定化モード同期ピコ秒パルス光源を新たに開発した。さらに、非線形光学効果による波形歪みを補償するために、逆伝搬法と呼ばれるディジタル信号処理をコヒーレントパルス伝送に発展させ、受信した1つのトリビュータリを時分割多重して逆伝搬させる手法を新たに開発した。これらの要素技術を用いて、単一チャネル3.84 Tbit/s、64 QAM信号の150 kmコヒーレント光ナイキストパルス伝送に世界で初めて成功した。 (c)に関しては、平成26年度に我々が新たに提案した「ナイキストレーザ」において、ナイキストパルスが有するSinc関数状の波形が定常解として存在することを理論的に解明した。ナイキストレーザとは、モード同期レーザの共振器内に光フィルタを挿入し、そのスペクトル形状の制御によりナイキストパルスを直接出力可能なレーザである。レーザ共振器中の波動伝搬を摂動解析することにより、矩形状の光フィルタの両端に最適な大きさのピークを設けることでナイキストパルスが定常的に発振可能であることを初めて明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はナイキストパルスの高速・高効率伝送への有用性を実証するために研究を加速し、コヒーレントならびにノンコヒーレントの両方式でシンボルレートの高速化ならびに長距離化に取り組んだ。ナイキストパルスの超高速・長距離伝送を実現するにあたり、本年度は特に非線形波動伝搬を中心とした伝送特性の理論解析、ならびに非線形波形歪み補償用のディジタル信号処理の開発に注力した。その結果、単一チャネルで3.84~5.12 Tbit/sという当初の計画を大きく上回る高速化に成功している。これにより、今後は当初想定しなかった単一チャネルで10 Tbit/s級の超高速伝送の実現が視野に入りつつある。これと並行して、光源技術に関しても大きな進展が得られ、周波数安定化コヒーレントモード同期パルスレーザの開発にいち早く成功したことにより伝送技術が著しく加速している。さらに、ナイキストレーザの発振特性の解明に端を発して新たなモード同期理論を構築することが出来、ナイキストパルスの多機能性という観点からも学術的なインパクトが急速に広がりつつある。以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展しているものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
以上のように当初計画を上回るペースで研究開発が進展していることから、平成29~30年度に予定していたナイキストパルスの多波長化を前倒しし、28年度よりナイキストパルスの波長多重(WDM : Wavelength Division Multiplexing)伝送に向けた要素技術の構築に着手する。波長可変コヒーレントナイキストパルス光源を開発し、ナイキストパルスのWDM化によりその高い周波数利用効率の有用性を実証する。また、単一チャネルで5 Tbit/s級の伝送がノンコヒーレントナイキストパルスで実現できる見通しが得られたことから、シンボルレートをさらに倍増させ2.56 Tbaudへの高速化に着手する。これはこれまでの光時分割多重では前例のない高速化であるが、ナイキストパルス以外ではスペクトルの占有帯域が広過ぎるため実現が不可能な領域であり、これが実現できれば最高の伝送性能を有する極限技術として光通信分野に及ぼすインパクトは極めて大きいと考えられる。これと並行して、コヒーレントナイキストパルスによる単一チャネル10 Tbit/sの実現についても検討を開始する。
|