2016 Fiscal Year Annual Research Report
多機能なコヒーレントナイキストパルスの提案とそれを用いた超高速・高効率光伝送技術
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26000009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中沢 正隆 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80333889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣岡 俊彦 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (40344733)
吉田 真人 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10333890)
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Project Period (FY) |
2014 – 2018
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Keywords | 高速光伝送 / ナイキストパルス / デジタルコヒーレント / 周波数利用効率 / 光時分割多重 / パルス整形 / 超短光パルス / QAM |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はナイキストパルス伝送における高速化ならびに周波数利用効率拡大への取り組みとして、(a) 超高速ノンコヒーレントナイキストパルス伝送におけるシンボルレートの高速化、および(b) 高いOSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio)を有する周波数安定化モード同期ピコ秒パルス光源の開発と本レーザを用いた超高速・高効率コヒーレントナイキストパルス伝送を中心に取り組んだ。 (a)に関しては、ノンコヒーレントナイキストパルスのシンボルレートを640 Gsymbol/sから1.28 Tsymbol/sへ高速化することにより、単一チャネルで5.12 Tbit/sの超高速伝送を実現した。具体的には、中継増幅器としてEDFA (Erbium-Doped Fiber Amplifier)とラマン増幅器を併用することで伝送信号のOSNRを改善するとともに、受信部において多重分離に用いる非線形ファイバループミラー(NOLM)の高速化を図った。さらに、NOLMに用いる制御光パルス光源として新たにLバンドで発振する40 GHzサブピコ秒モード同期ファイバレーザを作製し、これにより高速且つ高精度な多重分離を実現した。その結果、従来パルスでは困難であった単一チャネル5.12 Tbit/s信号の300 km伝送に世界で初めて成功した。このときの周波数利用効率は2.5 bit/s/Hzであった。 (b)に関しては、コヒーレントナイキストパルスを用いて単一チャネル3.84 Tbit/sの超高速伝送を10 bit/s/Hzを上回る高い周波数利用効率で実現した。具体的には、10 GHz, 1.55μm HCN周波数安定化モード同期レーザを新たに作製し、これをコヒーレントナイキストパルス光源として用いることにより、従来の光コム発生器を用いる方法と比較してOSNRを10 dB以上改善できることを明らかにした。さらに、非線形光学効果による波形歪みを補償するために、逆伝搬法と呼ばれるディジタル信号処理技術をナイキストパルス用に新たに開発した。本手法は、多重分離して受信した信号をディジタル信号処理上で再び時分割多重化し、伝送路を逆方向に伝搬させることにより歪みの無い信号を再生することが特徴である。これらの要素技術を用いて、単一チャネル3.84 Tbit/sで10.6 bit/s/Hzと高い周波数利用効率を世界で初めて実現した。従来技術ではこのような優れたデータは不可能であったが、コヒーレントナイキストパルスによりこの実現に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ノンコヒーレントおよびコヒーレントの両方式で、ナイキストパルス伝送のシンボルレートの高速化ならびに周波数利用効率の増大を実証した。ノンコヒーレント伝送に関しては、単一チャネルで5.12 Tbit/s伝送が実現できたことから、当初想定していなかったさらなる高速化として、シンボルレートを1.28 Tsymbol/sから2.56 Tsymbol/sへ高速化することにより、単一チャネル10 Tbit/s伝送に着手している。一方コヒーレント伝送に関しては、周波数安定化モード同期パルス光源の開発によりナイキストパルスの高速化が大きく加速している。本年度は本レーザを送信用光源として用いることによりシンボルレートを160 Gsymbol/sから320 Gsymbol/sへ高速化することができている。レーザに関しては、スペクトルから縦モード1本を抽出しその周波数を波長1.55 μm帯の周波数基準であるHCN(シアン化水素)の吸収線へ安定化させることにより、世界で初めて光周波数を安定化した10 GHz, 0.95 psのレーザを実現したもので、これにより高速・高効率な伝送が実現した。現在は本レーザを局発光源としても用いることにより、640 Gbaudへの高速化(伝送速度7.68 Tbit/s)を目指して研究を進めている。また、これらの高速化と並行して、本研究の最終目標であるナイキストパルスの波長多重伝送の実現に向けて、大容量波長多重伝送系の構築にも着手し、基礎的なデータが得られつつある。以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した研究開発の進展状況を踏まえ、平成29年度はナイキストパルスのさらなる高速化と多波長化への取り組みを一層加速する。ノンコヒーレント方式による単一チャネル10 Tbit/s伝送は、従来の光パルスではスペクトルが広過ぎるため、ナイキストパルスでしか実現不可能な伝送速度である。これが実証できれば、ナイキストパルスが最も優れた伝送性能を有するパルスであることを示すことが出来、インパクトが大変大きいと思われる。 コヒーレント伝送の高速化に関しては、受信部における局発光源の高性能化から着手する。これまでのコヒーレントナイキスト伝送においては、CWレーザのOPLL (Optical Phase-Locked Loop)により伝送信号と局発信号の位相を同期させ、位相同期したCW光から光コム発生器によりナイキスト局発光パルスを発生させていた。今後は、モード同期レーザ用のOPLLもしくは注入同期技術を開発し、ナイキスト局発光パルスをより簡便で且つ高いOSNRで生成する技術を創出していく。このようなパルス光源の光位相同期は前例がなく、学術的にも極めて波及効果の大きい技術である。 これと並行して、ナイキストパルスの有する高い周波数利用効率の特徴を波長多重伝送において実証するために、多波長ナイキストパルスの発生技術の開発に着手し、大容量波長多重伝送系の構築を進める。従来の波長多重技術では、1チャネルあたりの伝送容量が低いため、波長数が数100チャネルと複雑なシステムになっていた。しかし、本プログラムで開発している高速ナイキストパルス伝送による時分割多重を導入することにより、波長多重数と時分割多重数とを最適化した光伝送システムの実現を目指す。
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Research Products
(18 results)