2015 Fiscal Year Annual Research Report
超高解像度観測と数値モデルによる大雪や突風をもたらす降雪雲の動態に関する研究
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26242036
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
山田 芳則 気象庁気象研究所, 予報研究部, 室長 (80553164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 友徳 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (10512270)
山田 朋人 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10554959)
南雲 信宏 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 研究官 (30624960)
藤吉 康志 北海道大学, 低温科学研究所, 名誉教授 (40142749)
牛尾 知雄 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50332961)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 降雪雲 / 大雪 / 突風 / 降雪量 / X-MPレーダー / ドップラーレーダー / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
降雪雲に関わるメソα~γスケールの現象について有益な成果が引き続き得られている。 デュアルドップラー解析(水平解像度 1 km)を行った結果、寒気吹き出し時に札幌で降雪量が多くなる場合には少ない場合に比べて混合層内での鉛直シアーが比較的強いことがわかった。また、降雪雲内の上昇流の大きさは降雪量にはあまり依存せず、これらの値は同じ解像度での数値モデル実験結果と整合していた。Kuバンドレーダーによる対流スケールの解析から、対流活動が比較的活発な降雪雲内では雲の上部で形成されたやや強い反射強度の領域が数分の間に地上付近まで落下してくる様子が解析された。一方、降雪強度が弱い降雪雲では、対流を示唆するような構造はほとんど見られなかった。 新規に開発したバルク微物理モデルと現行モデルとを用いて札幌での大雪事例について数値実験(水平解像度が1-kmと5-km)を行った結果、新モデルによるバンド状降雪雲の再現性が高く新モデルの優位性が示された。また、地上降雪粒子観測と高解像度数値実験(水平解像度250m)とを比較した。 石狩平野北部に到達して大雪をもたらすようなバンド状降雪雲4事例について、降雪粒子や熱力学的構造などを移動観測した結果、日本海から内陸に進入した降雪雲が内陸で再発達することで豪雪をもたらしていることが新たに解明された。 北海道周辺のPolar Lowに着目して冬季(12月~3月)30年分について20kmメッシュの数値実験および海氷や地形を変えた感度実験を行った。海氷面積を広げた実験や極東の山脈を除去した実験では,南進Polar Lowの発生数が減少したのに対し,東進Polar Lowには大きな変化が見られなかった.総観場の解析から,南進Polar Lowは東進するものに比べて中心気圧が高く低気圧の勢力が弱いため,海氷面積や地形などの下部境界条件に敏感であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
降雪に関わるメソα~γスケールの現象について、マルチドップラーレーダー解析やKuバンドレーダー、数値モデル実験、地上降雪観測においてはデータ取得や解析がおおむね順調に進捗していると考えている。なお、昨冬の気象庁レーダーデータについては今後一括して提供されるようになるため、この報告書作成時点ではデータ提供待ちとなっている。 計画通りに進捗しているものは、ドップラーレーダーデータによる降雪雲のメソβ、γスケールの解析、固定型と移動型の地上降雪観測によるデータ収集と解析、メソαスケール現象であるPolar Low の数値実験による解析、雲解像度の数値モデル実験と地上降雪粒子観測との比較等である。初年度の冬には想定外の機器の不具合等が発生したKuバンドレーダー観測においても、メーカーによる機器の調整等によってデータが取得できるようになり、対流スケールでの降雪雲の構造とその時間変化が解析できるようになっている。計画以上の成果は、氷相2-moment(混合比と数濃度を予報)の新しいバルク微物理モデルの開発がほぼ終了し、すでに気象庁非静力学モデルのオプションとして組み込んで、この新モデルの性能を評価するための実験が行えるようになったことである。新しいモデルは、現行のモデルと比較して降雪雲や大雪の再現性がより高くなったことが予備的な実験結果から示されている。 計画が十分に達成できていないと考えられる点は次の3点である。まず、昨冬はエルニーニョの影響による暖冬傾向のため、札幌やその周辺では寒気吹き出し時の大雪が発生せず、大雪時のKuバンドレーダーデータが取得できなかったことである。第二に、X-MPレーダーデータと地上降雪粒子観測とを結合させて降雪量をより精度よく評価する方法の開発への取り組みがやや遅れている。最後は、複雑地形上でのマルチドップラー解析システムの構築である。
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Strategy for Future Research Activity |
大雪や突風をもたらすような雪雲の解明に向けて、下記のように昨年度と同様の解析や数値モデル実験を引き続き実施するとともに、最終年度であるので研究の総合的なまとめを行う。 (1) 石狩平野に展開されているドップラーレーダー(札幌、新千歳、北広島、石狩)データを駆使して、様々な降雪雲についてメソβ、γスケールの構造を解析し、大雪をもたらす降雪雲の特徴を明らかにすること、(2) 観測で捉えられた特徴的な現象に関して雲解像度の数値実験を実施すること、(3) Kuバンドレーダー解析によって、降雪雲の対流スケールの構造とその時間変化を解析すること、(4) X-MP レーダーデータと地上降雪粒子観測とを組み合わせて、精度の高い降雪強度の算出方法を開発すること、(5) 石狩平野に大雪をもたらすメソαスケールの現象に関して解析や数値実験を行うこと、(6) 平成26,27年度に取得したデータ解析を進めること、(7) 平成27年度に新規に開発したバルク微物理モデルの改良を行うこと、(8) 山地などを含む複雑地形上でも空間解像度 1 km 程度で雪雲内の気流構造が算出できるような解析システム(国内初)の開発めざすこと、である。 昨冬はエルニーニョの影響もあって暖冬傾向であったため、札幌やその周辺においては寒気吹き出し時おける大雪は発生しなかった。これまでに寒気吹き出し時の大雪をもたらす降雪雲についてのデータが取得できていないため、大雪時の降雪雲データの取得や解析を目指して、当初予定を変更して今年度の厳冬期の終わりまでKuバンドレーダー観測を継続する計画である。
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Remarks |
この科研費のために、研究の意義や概要、成果を広く知ってもらうことを目的としたホームページである。今後は得られた成果等を逐次追加して、さらに充実させていく。一般市民の方にも理解してもらえるように文章やコンテンツなどを工夫する。
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Research Products
(14 results)