2014 Fiscal Year Annual Research Report
近代移行期の港市と内陸後背地の関係に見る自然・世界・社会観の変容
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26244035
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
弘末 雅士 立教大学, 文学部, 教授 (40208872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荷見 守義 弘前大学, 人文学部, 教授 (00333708)
守川 知子 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00431297)
石川 禎浩 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10222978)
栗田 和明 立教大学, 文学部, 教授 (10257157)
唐澤 達之 高崎経済大学, 経済学部, 教授 (10295438)
佐々木 洋子 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (30332480)
荒野 泰典 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (50111571)
土田 映子 北海道大学, メディアコミュニケーション研究院, 准教授 (50313169)
貴堂 嘉之 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (70262095)
清水 和裕 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (70274404)
渡辺 佳成 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80210962)
高橋 秀樹 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (80236306)
疇谷 憲洋 大分県立芸術文化短期大学, 国際文化学科, 准教授 (80310944)
上田 信 立教大学, 文学部, 教授 (90151802)
鈴木 英明 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (80626317)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海域世界 / 内陸後背地 / 港市 / 河川ルート / 港市・後背地関係 / 内陸農業空間 / 交易 / 近代移行期 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となった平成26年度は、近世時期(15~17世紀)における港市と内陸後背地との関係を重点的に研究するために3回研究会を開催した。東アジアと東南アジアに力点をおきつつ他地域の事例も交え、いかなることが研究されてきたかを検討し、抱えている課題を提示し合った。まず東南アジア島嶼部の歴史研究で議論されてきた港市と内陸後背地の関係モデルをたたき台にし、東南アジア大陸部や東アジア(中国と日本)の事例と比較検討した。また合わせて、近代移行期の状況も視野にいれ、何が問題とされてきたかを議論し、史料の状況を確認し合った。それをもとに東アジア、東南アジア、南アジアの研究者7名で、中国の雲南を訪問調査し、雲南と南シナ海海域世界、ベンガル湾海域世界との歴史的関係を、河川ルートと取引される交易品に注目しつつ考察した。 この結果、雲南や北タイ、ラオス、ミャンマー中央部の中国と海域世界を中継するルアンプラバン、ビエンチャン、チェンマイ、マンダレー、アヴァなどの諸都市の重要性を改めて認識し、そこにしばしば王都がおかれたことの意義を確認した。そうした都市では、社会統合のために広域秩序原理となる上座仏教が信奉されたが、その状況を島嶼部の港市におけるイスラームと比較検討した。また上記の都市の周辺は稲作農耕地帯であり、交易活動を補完する関係にあったことが明らかになった。さらに内陸世界と海域世界が常時結びつけられていたわけではなく、時としてそのネットワークは状況に応じて切断される、流動的なものであったことが議論された。これらをとおして、近代移行期に内陸部の人々を海域世界と強く結びつけるネットワークの構築のされ方を展望した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究会をとおして、港市と内陸後背地の歴史的展開について、研究分担者と連携研究者を含めた本科研メンバーよりそれぞれの地域の研究現状と抱えている課題を提示してもらい、世界的規模で概観できた。また大陸部東南アジアを介して、中国南部と南シナ海やベンガル湾の海域世界とのつながりが明らかになり、東南アジア島嶼部の港市・後背地関係のモデルを修正できた。これにより内陸交易ルートの考察に展望が開け、西アジアやアフリカなどの事例と比較検討が可能になった。さらに近代移行期の事例検討が史料的に可能であることがわかり、本研究の目的達成のための足ががりを形成することができたことも、合わせて理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度東アジアと東南アジアをもとに構築した港市と内陸後背地のモデルが、遊牧民族が活動する西アジアや中央アジアさらにアフリカの内陸部の拠点都市の支配者と遊牧民との関係を考察する際に、どの程度あてはまるか検討する。前近代の東南アジアの港市支配者と海洋民との関係は、内陸部の支配者と遊牧民のそれと類似する要素を少なからず有するように思われる。なお、もし上述の類型が当てはまらない場合には、いかなる要因を加味することが必要なのか検討し、モデルの再構築にかかる。また近世から近代にかけて、内陸部の王都や首都が沿岸部に移行した事例が各地に存在するので、その理由や歴史的展開について考察する。これらを踏まえて、近代移行期にそうした海岸部と内陸部の関係や首都の役割がどう変容するのか検討し、本科研プロジェクトへの核心に迫っていく。
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Remarks |
立教大学弘末科研ホームページ http://www2.rikkyo.ac.jp/web/hirosue-kaken/
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